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とんかつ3名士 河田部長のとんかつひとり旅㊳ かつせい(仙台・五橋)

仙台市の老舗です。地下鉄五橋駅から徒歩5分、JR仙台駅からも徒歩 15 分ほどで到着します。高橋清見さんが1981年に開業した店で、高橋さんご夫妻と、女性店員で店を切り回しています。高橋さんは今年(2024 年)で80歳になられるはずですが、調理はお一人で担当されています。浜松の幸楽や高田馬場のとん太と並び、とんかつ業界の大ベテランです。店舗は昭和の趣を残す古い家屋で店内にはカウンターと小上がりがあります。

現在は昼のみの営業で11時から14時までですが、13時過ぎには閉店になることもあるようなので、早めに出かけた方がいいでしょう。私は開店30分前に到着しましたが、既に先客が一人待っていました。開店時間には1回転目に入れないお客さんもいました。私は9年ぶりの訪問になります。店の雰囲気は変わっていませんでした。メニューはロースかつ定食、ヒレかつ定食のほか、生姜焼、海老フライなどがあります。驚くのはその値段の安さです。ロースかつ、ヒレかつの定食がご飯、なめこ汁、お新香付きでなんと1000円です。9年前からほとんど値上げしていないようです。1700 円の特ロースかつ定食もあるのですが、前回特ロースを食べているのと、ロースかつとの違いは大きさだけ(ロース 130g、特ロース 200g)ということなので、今回はロースかつ定食にしてみました。

ご主人は「ロース1枚、特ロース3枚」と注文を復唱しながら作業を進めていきます。豚は宮城県産の豚で低温と高温で二度揚げします。縦だけでなく横にも包丁が入っているので一切れが小さく食べやすくなっています。衣は薄めで肉にしっかり着いています。脂身は少なめで赤身の適度な歯触りと旨みを楽しみタイプのとんかつです。塩もいいですが、このような伝統的なとんかつにはソースも合います。なめこ汁と自家製と思われる白菜のお新香も手抜き無しです。ご飯は宮城県産のササニシキ、かつてはコシヒカリと並ぶ人気品種でしたが、今は見かけなくなりました。懐かしさを感じます。この内容の定食で1000円というのはあまりにも良心的です。 おそらく後継者はおられないことと思いますが、一日も長く営業されることを願 ってやみません。

お勧めポイント
● ずば抜けたコストパフォーマンス
● 大ベテランの熟練の技

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河田 剛

大手証券会社の調査業務に携わる傍らでグルメアナリストとしても活躍。さまざまな料理を食べ歩き、著書『ラーメンの経済学』(KADOKAWA)で話題に。料理の背景や素材、流通に至るまで、幅広い視点での鋭い洞察が特徴。