和食STYLE

とんかつ3名士 河田部長のとんかつひとり旅㊲ 丸五(東京・秋葉原)

秋葉原の人気店です。創業者の竹内高由さんは、老舗の「かつ吉」で修業し、店長を務めた後、1975 年に独立しました。現在は創業者と長年一緒に働いた方が店を引き継いでいます。秋葉原の電気街にあるせいかインバウンド客も多く訪れます。代表待ち禁止の張り紙がありますが、日本語のため、インバウンド客については一人が五人、二人が六人と途中で増えてしまうのはちょっと困りものです。結局土日はかなりの時間待つことなります。

店内に入ると一階はカウンター席と二人用の小テーブル席、2 階はテーブル席になっています。内装が民芸調なのは「かつ吉」の影響でしょうか。メニュー構成はロースかつ、ヒレかつのほか、ソテー、生姜焼、海老フライ、松阪牛スタミナ焼などバラエティに富んでいますが、お勧めは特ロースかつ定食です。
こちらでは山形県平田牧場の平牧三元豚をのほか、時期によっては他の豚も状態を見極めながら使用しているようです。揚げ油はコーン油と胡麻油のブレンドで、低温で時間をかけて揚げていきます。衣は中粗のパン粉で、淡い色合いです。肉のカットはかなり分厚いものの、柔らかく噛み切るのにストレスがありません。口の中でジューシーな肉汁が沁み渡ります。脂身もさっと溶けます。
卓上の岩塩との相性が良いです。厚みの割に軽く胃もたれをしないのは宿物油ゆえでしょうか。ただ、植物油の場合ラードに比べて物足りないなく感じることも多いのですが、胡麻油が補強の役割を果たしているようです。

こちらはご飯、キャベツ(皮を剥いたトマトがつく)、お新香、赤だしのなめこ汁ともに丁寧な仕事ぶりです。皿に油取りの紙を置くようになるなど、少しずつ改善も加えているようです。食後にはお茶をジャスミン茶に差し替えてくれます。細部に至るまで老舗の矜持が感じられる店です。

お勧めポイント
● 厚みがある一方で食後観が軽いとんかつ
● 細部にわたる丁寧な仕事

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河田 剛

大手証券会社の調査業務に携わる傍らでグルメアナリストとしても活躍。さまざまな料理を食べ歩き、著書『ラーメンの経済学』(KADOKAWA)で話題に。料理の背景や素材、流通に至るまで、幅広い視点での鋭い洞察が特徴。