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とんかつ3名士 河田部長の とんかつひとり旅㊱ あげ福(東京・五反田)

黒毛和牛などの精肉卸として知られ、ステーキやハンバーグの店も経営するヤザワミート系列の店です。
2013年の開店で、五反田駅から少し歩く閑静な一角に店はあります。2013年の開店ですからもう10年が経っているわけですが、店内は清潔で油臭さは全くありません。カウンター席はビストロを思わせる高級感があり、そのせいか女性やカップルの客が多く見受けられました。

肉料理店などで経験を積んだ丸山卓也さんが店長として揚げ場に立っています。こちらは岩中豚をメインに使用しているのですが、訪問した日には沖縄の紅豚が入荷していたのでその上ロース定食にしました。
紅豚は紅芋などの雑穀類や泡盛もろみ酒粕、乳酸器などを与えて飼育した豚で、淡い紅色の肉質からその名がついているようです。これに海老フライを追加しました。

揚げ油は米油にラードを少し加え、低温でじっくり揚げているようです。パン粉は中屋パン粉工場のものを使用しています。米油で揚げるとんかつの特徴としては衣がさっぱりと仕上がることです。確かに衣は非常に軽く感じました。
一方、肉は非常にしっとり感があり、脂身ももたれることがありません。食後感が大変良いとんかつです。海老フライを追加したのは素材によって数種類のパン粉を使い分けているという話を耳にしたからです。とんかつと海老フライのパン粉が違うかどうか、確信は持てませんでしたが、見た目では海老フライの衣の方がより細かく見えませす。
また他の客に出されているメンチカツなどを見ると、メニューによって揚げる温度も変えているようです。かなり緻密な仕事だと思います。調味料のジンジャーソースは生姜焼を連想させる風味で面白いです。普段使いはもちろん、様々なシチュエーションで利用出来る店だと言えそうです。

お勧めポイント
● 食後感が軽いとんかつ
● 様々な利用シーンに対応

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河田 剛

大手証券会社の調査業務に携わる傍らでグルメアナリストとしても活躍。さまざまな料理を食べ歩き、著書『ラーメンの経済学』(KADOKAWA)で話題に。料理の背景や素材、流通に至るまで、幅広い視点での鋭い洞察が特徴。