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とんかつ3名士 河田部長の とんかつひとり旅㉝ 神田 ポンチ軒(東京・小川町)

静岡や目白で営業している洋食店「旬香亭」の斉藤元志郎シェフはとんかつなどの揚げ物やラーメンがお好きなようで、かつて赤坂でそれらのメニューを提供する「フリッツ」という店を経営していました。「フリッツ」の閉店後、それを発展させる形で「ポンチ軒」を神田に2012年開業しました。
ちなみに「ポンチ軒」という店名はとんかつの黎明期に上野にあった店の名前に由来しています。土曜日の昼、10名以上の行列が出来ており、入店まで1時間近く待ちました。
元々とんかつ屋だった古い建物を使っているようで、店内は庶民的な雰囲気です。厨房の中では二人の年輩の料理人が黙々と作業をしています。

この店では上がメキシカンポーク、特上が沖縄県産豚を使用しています。特ヒレ豚かつ定食にしました。ヒレにしたのはこちらの名物に500gのヒレ肉を丸ごと揚げる特ヒレ丸ごと一本揚げがあるからです。流石にこれを一人で食べるのは無理なので、次善の策をとったというわけです。

厨房には鍋が一つ、コーン油とゴマ油を6:4でブレンドした揚げ油を 140℃から160℃に温度を上げながら揚げているそうです。通常、揚げ物の油は 180℃前後ですから、揚げ時間は長めになります。衣には剥がれにくいバッター粉と色が薄く仕上がる糖度の低いパン粉を使っているようです。

運ばれてきたとんかつは一般にイメージされるとんかつそのもので、衣がさっくりと仕上がり、肉からはしっかりとした旨みが感じられます。卓上にはゲランドの塩、とんかつソース、太陽ソース、ゆずペッパーソースが置かれています。太陽ソースは旬香亭歩ループの店には必ずと言っていいほど置かれている風味の良いウスタ ーソースで、キャベツにかけて食べると良いでしょう。ピリ辛のゆずペッパーソースも味のアクセントになります。ご飯、豚汁も上出来です。価格が比較的リーズナブルなので普段使いしやすい良店です。

お勧めポイント
● 王道のとんかつらしいとんかつ
● 価格もリーズナブル

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河田 剛

大手証券会社の調査業務に携わる傍らでグルメアナリストとしても活躍。さまざまな料理を食べ歩き、著書『ラーメンの経済学』(KADOKAWA)で話題に。料理の背景や素材、流通に至るまで、幅広い視点での鋭い洞察が特徴。