和食STYLE

EATRAVELLER HIROEの女子美食旅 ㉞ 石川県珠洲市 「湯宿さか本」

奥能登の先端珠洲の地にある湯宿での滞在を終え、書店に立ち寄ると、特別なコーナーが目に留まった。そこには先程まで身を寄せていた『湯宿さか本』の書籍が展示されていました。この特設コーナーは、 【[REGULAR EDITION]その時差し出し方 1 ― 湯宿さか本 / すなば 】という写真集の出版を祝うものでした。

“いたらない、つくせない宿”というキャッチコピーが示す通り、さか本にはエアコンやテレビ、wifi なし。アメニテ ィはもちろん、歯ブラシまで自分で用意する必要があり、トイレは共同と聞けば戸惑いは否めません。ところが、そうした設備の不在が心地よい不思議な感覚をもたらします。なぜだろう。

料理が美味しいとは聞いていましたが、なるほど、丁寧な仕事ぶりが感じられます。豪華さはないけれど食材を厳選し、普遍的な満足感が訪れます。

夕食の締めに出される何の変哲もない焼きおにぎり。表面にいしるを塗って焼き上げます。美味しいなあ。

朝食には揚げたてのがんもどき。熱々をハフハフしながらザクりとかじる。ふんわり大豆の風味が鼻腔をくすぐります。 料理に対する真摯な姿勢がしっかりと伝わってきます。

館内は隅々まで清掃が行き届き、磨き上げられた廊下は静寂に包まれ、自然の美しさに囲まれた空間で、温泉に浸かり、心づくしの料理を味わう。ただそれだけ。そんな普通の瞬間が、ただ者ではない特別なものに感じられます。 代々受け継がれてきた家族の想いが息づく『湯宿さか本』では、その場所に訪れることで日常から離れて特別なひとときを過ごすことができることは確か。 とはいえ結局何がそんなに惹かれてしまうのか最後までわかリませんでした。はっきりと言えることは、 「また来たい」 そう思ってしまう宿なのです。

評価基準
わざわざ度:わざわざ旅する価値があるか
食材への愛:生産者さんへのリスペクト、食材のポテンシャルをどこまで引き出せるか
地産地消度:地元で生産されたものをどれだけ消費しているか
唯一無二度:いわゆるオリジナリティ
リピしたい度:わざわざ行ってみて尚再び行ってみたいか

わざわざ度 ★★★★★

食材への愛 ★★★

地産地消度 ★★★

唯一無二度 ★★★★★

リピしたい度 ★★★★★

過去記事はこちらから

過去記事はこちらから

大野ひろえ

美食を求め旅するEATRAVELLER. その土地ならではの食材を使ったディスティネーションレストランからB級グルメまで幅広く巡ります。趣味は変態料理人探し。