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とんかつ3名士 河田部長の とんかつひとり旅㉛ とんかつ いもや(東京・)馬喰町

かつて神保町に「とんかつ いもや」、「天丼 いもや」という2軒の店がありました。1959年に宮田三郎さんが創業、2018 年に閉店するまで格安でとんかつ、天丼を食べさせてくれました。私が学生の頃はとんかつ定食が 500円だった記憶があります。本家は閉店したものの、とんかつでは馬喰町と栃木市でのれん分けした店が営業を続けています。

馬喰町いもやの店主、樋口好雄さんは 1964年にいもやに修業に入り、その後一緒に働いていた女性と結婚して独立したそうです。60 年近くとんかつを揚げ続けていることになります。高齢なこともあり、現在は営業は日曜水曜以外のお昼のみ、土曜日も休みになることがあります。馬喰町の問屋街の中にあり、お客さんがひっきりなしにやって来ます。従業員はご夫婦の二人だけ、ご主人が調理を、奥さんが接客を担当しています。長年営業しているにも関わらず、店内は清潔で油臭さがありません。白木のカウンターも綺麗なままです。そしてお品書きがとにかく安いのです。とんかつ定食が 1,000円、ヒレかつ定食が 1,200円、エビフライ定食、魚盛り合わせ定食が 1,100円、単品のえびフライ、あじフライに至っては 200円です。

出来上がったとんかつ定食でまず目につくのはキャベツが大盛りになっていることです。これでもかというほどてんこ盛りになっています。とんかつの肉は、もちろん最近の高級店のような銘柄豚ではないと思いますが、脂の甘さがあり、下味もついているのでそのまま食べられます。ご飯、しじみ汁も値段を考えると十分な内容です。まさに飲食店の良心ともいえる商売をされている店だと思います。店を出て、白い暖簾にお辞儀をしたくなりました。

お勧めポイント
● お財布にとにかく優しい
● 誠実な仕事ぶり

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河田 剛

大手証券会社の調査業務に携わる傍らでグルメアナリストとしても活躍。さまざまな料理を食べ歩き、著書『ラーメンの経済学』(KADOKAWA)で話題に。料理の背景や素材、流通に至るまで、幅広い視点での鋭い洞察が特徴。