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とんかつ3名士 河田部長の とんかつひとり旅㉜ 矢田かつ(名古屋・大曽根)

名古屋でとんかつというと味噌かつが思い浮かぶのではないでしょうか。名古屋の味噌かつは戦後間もなく、屋台から発祥したとも言われていますが、諸説ありはっきりしません。とはいえ、今では広く食べられています。 味噌かつの有名店は幾つも有名店がありますが、特にお勧めなのは「矢田かつ」です。大曽根の駅から10分弱ほど歩くと店が見えて来ます。この店は 1965年創業で 2010年にいったん閉店したのですが、経営が引き継がれて「矢田とん」という店名になり、最近は再度「矢田かつ」になっています。以前昼に訪問した時には行列していましたが、夜は比較的空いているようです。

味噌かつの他にオリジナルソースを使ったソースかつもお勧めのようなのですが、外から名古屋に来ているので初志貫徹で味噌とんかつ定食(上)を注文します。豚肉は和豚もち豚を使用しています。群馬県渋川市のグローバルピックファームが生産している三元豚で、祖父世代の原々種豚から管理しており、旨み成分が非常に多くなっているようです。

それ以上にここをお勧めする理由は、味噌だれの美味しさです。名古屋の味噌かつのたれは八丁味噌が使われていることが多いです。八丁味噌は愛知県岡崎市の八丁町で生産されている長期熟成の豆味噌です。独特の渋味が苦手な方がいるかとは思いますが、料亭吉兆の創業者、湯木貞一氏が慣れるとこれでないといけないようになると書いているように、クセになる味です。この店の味噌だれはさらりとしている一方で八丁味噌の奥深さを感じさせるものになっています。衣が剥がれやすいのが玉に瑕とはいえ、ご飯、味噌汁も水準以上で、名古屋でとんかつを食べていることを実感させてくれます。

お勧めポイント
● 味噌だれの奥深さ
● 豚肉、ご飯、味噌汁も上質

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河田 剛

大手証券会社の調査業務に携わる傍らでグルメアナリストとしても活躍。さまざまな料理を食べ歩き、著書『ラーメンの経済学』(KADOKAWA)で話題に。料理の背景や素材、流通に至るまで、幅広い視点での鋭い洞察が特徴。