和食STYLE

⾼橋綾⼦のNO SUSHI, NO LIFE – 第四六回 鮨りかく

第四六回 鮨りかく

ハードル高すぎな会員制鮨

東麻布に10月にオープンした「鮨りかく」。親方の大塚章央さんからご連絡いただきランチで訪問。お店まではすぐに辿り着けるのですが、入り方がまったくわからない。お店の前を行ったり来たり、隣の扉を開けてみるとかいろいろやっていたら黒服の方が「高橋さまですか」と声をかけてくれました。扉を開けるに はメンバーズカードが必要でした。2024年5月1日から完全会員制となるので今は誰でも行ける、いわば準備期間。壁と一体化している扉の開け方は行く人の楽しみに内緒にしておきます。

中へ入ると黒い壁、木製のカウンターに縦格子、正面は真鍮、椅子は革張りでソムリエさんが黒蝶ネクタイってせいもあるのか、ちょっと銀座のクラブって感じ。席ごとにタブレットが設置してあってドリンクメニューはこちらを見ます。
って言ってもカウンターは8席だし、側にはソムリエさんがいるしでタブレットは1度も見ずで、意味あるのかな。オープンということで最初はシャンパーニュを。ランチは握りのみとつまみと握りの2つのコース。はじめにつまみが 5品出てきます。厚く切ってくれた鰹は弾力がブリッブリ。スミイカもねっとりです。水分を完全に抜くとこうなるとのこと。

続いての太刀魚塩焼きや平貝の磯辺巻きは可もなく不可もなく、真鱈白子の茶碗蒸しは見た目がまるでプリンで「わ〜!」となったけど味は普通でした。特別にサヨリの皮を炙ってくれたのはおいしくて日本酒が空になっちゃった。つまみはこれにて終了、握りの1貫目は春子鯛。おぉ、酢飯がふんわりです。米粒と米粒が離れているんじゃないかと思うくらい。平目もしっかり寝かせてあっておいしい。「おいしいものはお腹いっぱいにならないうちに」と3貫目にして自慢の中トロが早くも登場。スミイカ同様、水抜きが肝心とのことでトロトロです。

全体的に鮨ダネは上質のものを使っていて、食感がねっとり、トゥルトゥルが多いかな。イクラも半熟でねっとり。出汁の漬け方もいい感じです。酢飯がふんわり軽いのでどうしても鮨ダネの印象が強くなります。ま、それはそれで特徴的でいいかも。天然縞鯵は身がしまっておいしかったな。

穴子はしっかり焼いていて表面がカリッと香ばしい。ふんわりしっとりが多いけど、私はこういう穴子好きです。半分にして塩と煮つめでいただきます。握りはイクラの小丼含めて7貫。満たされなかったので追加でコハダと鉄火巻きをお願いしました。鉄火巻きの赤身は漬けにしていないけど味が濃くてめちゃおいしい鮪でした。あ、やっぱり鮨ダネの記憶しかない。本日のお会計、グラスシャンパーニュと日本酒3合で23,850円。ディナーだと4万円はいきますね。会員になるには最初に 55,000円が必要です。ご近所でここしか来なくてもいいかもと思えるならいいかもしれませんが、私みたいにあっちもこっちも行く人間にとってはハードルの高いお店です。でも「東京カレンダー」っぽいとか「ザ・港区」な感じが好きならこの秘密めいたお店は自慢できるかも。

綾⼦の⾃分勝⼿評価基準
おひとりさま度:ひとりではもちろんのこと、たとえ初めてでも楽しめるかどうか。また何か素敵なことが起こるか、客層はどうかも含む。
⼝福度=価格の満⾜度:鮨⾼騰の折、基準は⾷べて飲んで 4万円以下。おいしいは当然、⽀払いをした時にどう感じたか。
ロケーション&設え:「google map」で迷わずたどり着けるか。内観のセンス、器や酒器、トイレの清潔感など店内の印象。
サービス:スタッフの接客の満⾜度
のどの渇き度:完璧に個⼈的主観だが、塩分過多などでのどが乾くような味が苦⼿。評価は星が多いほど、のどは渇かないということ。

【評価】
おひとりさま度 ★★★★
⼝福度=価格の満⾜度 ★★
ロケーション&設え ★★
サービス ★★★★
のどの渇き度 ★★★★

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⾼橋綾⼦
(たかはしあやこ)

フードパブリシスト。国内外ファッションブランドのプレスとして従事した中で肥えた“食”へのこだわりは、その後の素晴らしい人々との出会いと相まっていつしか人⽣そのものに。
その間に培った食のデータと人脈を武器に、年間 1000 軒ほどの外食で“喜ばれるレストラン”の発掘に勤しむ⽇々。「綾⼦のギョーカイ総受けグルメ手帖」「BRUTUS」「GQ」「食べログマガジン」「集英社オンライン」などに寄稿。BS フジ「リモート☆シェフ」では審査員として定期的に出演。
東京都主催の食の祭典、「Tokyo Tokyo Delicious Museum 2023」のプロデューサーに就任。また企業のメニュー開発やアドアイザーにも携わる。おいしいものしか喉を通らない不思議体質。