和食STYLE

⾼橋綾⼦のNO SUSHI, NO LIFE – 第四五回 シン・ニクズシマン

第四五回 シン・ニクズシマン

馬肉がうまい! 変わり寿司としては満足かな

ひと昔前はオシャレピーポーやクリエーター、業界人など大人が集まるいい横丁だったのに、いつの間にか若者だらけ、しかも出会い横丁と化した「恵比寿横丁」。ワタクシがひとりで行くにはかなり憚れるのですが肉寿司食べたさに勇気を振り絞りいざ突撃! まだお店によってはオープンしていないくらいの火曜日の17時半過ぎだっていうのにすでに仕事終わりらしき男女グループが飲み始めていました。おひとりさまは厨房すぐ横の席に案内され、さてとここはおもしろそうなサワー系でいきますかと、「泡レモンサワー」をオーダー。レモンクリ ームがのっかった完璧なフォトジェニックでございますが、意外にも濃いめで調子にのると酔っ払う系です。するとすぐにお通しが。和牛にイクラをのせちゃうっていうお通しとは思えぬ太っ腹握りで、これがめちゃくちゃおいしい! 酢飯が常温なのが残念だけどお肉はやわらかくていいよ、いい!

これは当たりかも!とまずは「大将おすすめ3貫」と「極上赤身(馬肉)」から。本日のおすすめは「馬肉赤身」「牛タン」「燻し鴨」。馬、うま〜い! 牛タンはもうちょっとタンのサクサク感があったらいいと思ったけど胡椒が利いてまずまず。鴨は燻し感がなくてイマイチ。極上赤身はちょっと臭みがある。

続いては「和牛 SUKIYAKI」。まぁ予想通りのビジュアルですね。ただ味が予想とは裏腹で、お箸要らずのとろとろかと思いきや硬かった。しかもかなりデカいのでひと口だとうぷぷってなりそうなのにお箸で切れないから入れるしかない。なのでしばらくはのどにつまらなせないよう、うまく食べるのに必死です。味付けはいいんだけどなぁ、惜しい!

次は何にしようかとメニューを見ると、そそられるのは 2 貫セットだったり、〆だったり。じゃ、おつまみ系にいこうかとも思ったけどわりとビッグサイズなので悩む。やっぱりおひとりさま向きではないんだな、と思っていると「甘いの大丈夫ですか? オーダーミスしたのでよかったら飲んでください」と白ブドウの果実酒ソーダ割りをプレゼントしてくれました。甘いけどおいしい! おひとりさまで良かったとニンマリ。よし、馬肉の握りに絞って「えんがわ」と「塩ユ ッケ」を。おぉぉ、いいじゃん! 甘だれに塩胡椒ガッツリでうまい! えんがわはクチュクチュでとろんとしてずっと噛んでいたくなります。

果実酒がおいしかったので甘くないレッドグレープフルーツのソーダ割りとともに、食べていない「漬け赤身」と「ネギトロ」をオーダー。ネギトロの酢飯だけなぜかほんのり温かく(炊いたわけじゃないと思われますが)、しかしやわやわでむしろ逆効果。漬け赤身の酢飯は冷めていますが心なしかやわらかめ。が、馬肉もタレもおいしいので許せます。正直、低価格なので期待していなかったせいか、変わり種を楽しむ感覚ならばいいお店だと思いました。本日のお会計、サワー2杯と握り9貫で4,411円。今度はお友達と来よう。

綾⼦の⾃分勝⼿評価基準
おひとりさま度:ひとりではもちろんのこと、たとえ初めてでも楽しめるかどうか。また何か素敵なことが起こるか、客層はどうかも含む。
⼝福度=価格の満⾜度:鮨⾼騰の折、基準は⾷べて飲んで 4万円以下。おいしいは当然、⽀払いをした時にどう感じたか。
ロケーション&設え:「google map」で迷わずたどり着けるか。内観のセンス、器や酒器、トイレの清潔感など店内の印象。
サービス:スタッフの接客の満⾜度
のどの渇き度:完璧に個⼈的主観だが、塩分過多などでのどが乾くような味が苦⼿。評価は星が多いほど、のどは渇かないということ。

【評価】
おひとりさま度 ★★
⼝福度=価格の満⾜度 ★★
ロケーション&設え ★★
サービス ★★★
のどの渇き度 ★★★★

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⾼橋綾⼦
(たかはしあやこ)

フードパブリシスト。国内外ファッションブランドのプレスとして従事した中で肥えた“食”へのこだわりは、その後の素晴らしい人々との出会いと相まっていつしか人⽣そのものに。
その間に培った食のデータと人脈を武器に、年間 1000 軒ほどの外食で“喜ばれるレストラン”の発掘に勤しむ⽇々。「綾⼦のギョーカイ総受けグルメ手帖」「BRUTUS」「GQ」「食べログマガジン」「集英社オンライン」などに寄稿。BS フジ「リモート☆シェフ」では審査員として定期的に出演。
東京都主催の食の祭典、「Tokyo Tokyo Delicious Museum 2023」のプロデューサーに就任。また企業のメニュー開発やアドアイザーにも携わる。おいしいものしか喉を通らない不思議体質。