和食STYLE

とんかつ3名士 河田部長の とんかつひとり旅㉚ とんかつ中村(大阪・千林)

以前紹介した「とんかつ ふじ井」と同様、千林商店街を脇道に入った場所にあります。大阪は最近のとんかつの動きが目覚ましく、開店してさほど経っていない注目店が多いのですが、こちらは中村智治さんが2016 年に始めた店で、大阪の注目店の中では比較的ベテランの店です。

面白いのは店の前に来るとテイクアウトのデリのようにしか見えず、食事するにはいったん持ち帰りコーナーに入って横の扉を通るようになっていることです。基本の豚は林 SPF ですが、その時によって様々な銘柄豚が入荷するようです。ただ、訪問した日は京丹波ぽーくが売り切れで、やはりレギュラー的な存在らしい甘とろ豚のロース・ヒレ食べ比べ定食を注文しました。甘とろ豚は愛媛県で裸麦を食べさせて飼育している豚で、かつて日本の豚肉の主流であった中ヨークシャー種が元になっているようです。

低温でじっくり揚げているようで、しばらく待ちます。運ばれて来たとんかつは最近の大阪の通例で断面を上にして盛り付けられています。中心部が微かにピンク色で、否が応でも期待が高まります。味わってみると柔らかさはもちろんのこと、肉々しさが迸ります。ラードの香り(宿物油を少し加えているそうです)も広がって来ます。衣は軽快な歯ざわりです。卓上のオーストラリア産ミネラルハーヴェスト塩を少しずつつけながら味わっていくと、ロースとヒレの個性の違いが明確にわかります。

そして、ご飯と豚汁、キャベツもしっかりと美味しいのです。この盛り合わせ定食でも 2000円台と値段が控えめなので、気軽に訪れることが出来ると思います。ただ、席数が少ないので、場合によっては多少の待つことを覚悟した方がいいかもしれません。

お勧めポイント
● とんかつ、ご飯、豚汁のバランスよさ
● 値段控えめで CP が良い

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河田 剛

大手証券会社の調査業務に携わる傍らでグルメアナリストとしても活躍。さまざまな料理を食べ歩き、著書『ラーメンの経済学』(KADOKAWA)で話題に。料理の背景や素材、流通に至るまで、幅広い視点での鋭い洞察が特徴。