和食STYLE

EATRAVELLER HIROEの女子美食旅 ㉙ 韓国・全羅南道 「白羊寺のヴィーガン料理」

韓国・ソウルから南へ3時間、豊かな自然に囲まれた仏教寺院の一角で、僧侶仲間やミシュランの星付きシェフに食事を振る舞う料理人がいます。Netflix の『Chef’s Table』に登場した僧侶チョン・クワンは自身のレストランを持たずに番組に出演した唯一の人物です。2022 年「アジアのベストレストラン 50」のアイコン賞を受賞したクワンさんは、白羊寺の住職でありながら日々哲学的なアプローチで韓国精進料理に情熱を傾けています。

クワンさんの料理は料理界のエリート達にインスピレーションを与え続けています。ニューヨークやデンマークのミシュランスターシェフ達も熱心に訪れ、コペンハーゲンの Noma のシェフ、レネ・レゼピもその一員です。 そんなクワンさんにお会いし直々に料理を学ぶテンプルステイをご紹介します。 清らかな渓流を隔てた白羊寺のふもとにある宿泊所で、世界各国から集まった16名と寝食を共にしました。参加者の中にはシェフもちらほら。

テンプルステイプログラムに参加することはただ単に料理を学ぶだけではなく、朝のお勤めである掃除、瞑想、座禅を組み、祈りを捧げ、料理に込められた仏教哲学に耳を傾け、料理に対する正しい姿勢を学ぶことでもあります。 ご存知のように精進料理は肉や魚など動物性の食材は一切使いません。クワンさんの料理は近隣で採れた旬の野菜や修行僧達が摘んできた山菜をふんだんに使ったヘルシーでシンプルなものばかり。静謐な空気に包まれた荘厳な寺とは対照的に、クワンさんの厨房は生命力に満ち溢れています。デモンストレーション形式でテキパキと料理が作られ、通訳を交えてレクチャーが行われます。「ヴィーガンになるには地球を愛し、自然を慈しみ、生きとし生けるもの全てに敬意を払わなければならない。それらが融合し、自分自身を尊重することから始まり、世界全体を尊重することへと変化していくのです。」と彼女は語ります。

キムチは特に特徴的で、ニンニクを使っていないせいか優しい旨味が広がります。ギュっと濃縮された旨味の塊「シイタケのカンジャン煮」や素朴な「かぼちゃの豆腐蒸し」は本当に癒される味わい。自家製発酵調味料で味付けしているのでシンプルながら味に幅があります。クワンさんの愛情が込められたおふくろの味とでも申しましょうか、どの料理も毎日食べたい!滋味豊かで滋養に満ちています。

韓国のガストロノミーはここ数年で驚くべき進化を遂げており、クワンさんは先見の明のあるシェフ達の指導者として位置付けられています。彼女のもとで学んだシェフ達が今後どのように韓国料理界を牽引していくのか、楽しみでなりません。 彼らの成長をワクワクしながら注視していきたいと思います。

もし世界中の名だたるシェフを魅了した精進料理に興味があるなら、韓国の白羊寺へ Let’s Go! 世界屈指の ヴィーガン料理人クワンさんの作る崇高なヴィーガン料理を是非体験してみてくださいね!! (注意:テンプルステイは不定期です。最新情報は白羊寺の公式ウェブサイトを参照して下さい。)

評価基準
わざわざ度:わざわざ旅する価値があるか
食材への愛:生産者さんへのリスペクト、食材のポテンシャルをどこまで引き出せるか
地産地消度:地元で生産されたものをどれだけ消費しているか
唯一無二度:いわゆるオリジナリティ
リピしたい度:わざわざ行ってみて尚再び行ってみたいか

わざわざ度 ★★★★★

食材への愛 ★★★★★

地産地消度 ★★★★★

唯一無二度 ★★★★★

リピしたい度 ★★★★★

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大野ひろえ

美食を求め旅するEATRAVELLER. その土地ならではの食材を使ったディスティネーションレストランからB級グルメまで幅広く巡ります。趣味は変態料理人探し。