和食STYLE

⾼橋綾⼦のNO SUSHI, NO LIFE – 第四三回 江戸前寿司 すし福

第四三回 江戸前寿司 すし福

もうちょっと何とかなると思うのですが…

渋谷で今からお鮨食べよう!と飛び込みで入った「江戸前寿司すし福」。電話の応対はすごく良い! 「ファミリーマートの先の日高屋のビル」と道案内も丁寧にしてくれたのでわかったけれど、日高屋とその他のエステや整体の看板が目立ちすぎて、本当にこのビル?って思ってしまう。入り口を覗けば奥に店名が書かれた大きな布看板があるけどね。ついでに B1Fっていうのも書いてくれればわざわざ食べログを確認しなくてもよかったのに、とブツブツ言いながら入店するも、お店は明るくて清潔感があって“ザ・寿司屋”って感じ。正面に絶対に親方ですよねって感じの恰幅の良い人が「いらっしゃい!」と威勢の良い声で迎えてくれました。

その親方の目の前の席に案内され、麦焼酎ソーダ割りをお願いする。お酒のラインナップはちょっと微妙、知らない銘柄が多いです。こちらは握りの間につまみが出るスタイル。本日は最初に「蟹味噌の茶碗蒸し」「太刀魚 岩塩炙り」が出ました。どちらも普通においしい。その後にスペシャリテの「福巻き」。いぶりがっこのネギトロ巻きの上にぶつ切りの本鮪と雲丹をのせ、さらにキャビアをトッピングしています。親方さん、どうだ〜、こんなの食べたことないだろ的なドヤ顔です。どこにでもあるけどねと心で思いながら口に入れようとしたけど、でかいし高さもあるしひと口じゃ入りません。仕方ないので雲丹とマグロぶつを半分食べてからひと口で。残念、崩壊しました…。でもいぶりがっこがいい塩梅でおいしかった。

ここからはしばらく握りが続きます。中トロはものすごく大味、ヤリイカはバーナーで軽く炙ったけど冷え冷え。イカ墨の塩をのせたのは良かったけど。鰹は胡麻醤油漬けしてネギと生姜のペーストを塗ってます。アイデアは買うけど胡麻醤油だから鰹の色が悪く見えちゃうし、味もなんかイマイチ。胡麻鯖みたいにしたかったのかな、でも残念な結果に。金目鯛は炙って柚子胡椒をちょこんとのせていますが、これも皮に焦げ目が軽くつく程度にバーナーで炙っただけなので冷たいわけで。金目鯛の脂のおいしさは感じられず…。あ、マルドンの塩を振った根室の雲丹の軍艦巻きはおいしかった。

車海老にはブルーソルトとか赤身漬けには京都の黒胡麻七味とか、ちょろっと調味料をのせるのが好きなのかな。なぜかここでお漬物と黒糖の玉が添えられて、お口直しかなと思って食べたら玉じゃん! しかも甘いし。この後に胡麻豆腐と翡翠茄子と干瓢巻き(これも握りの最後じゃないのか?)と穴子が出てくる。そしてシジミのお吸い物(お味噌汁ではない)と果物でフィニッシュ。順番にセオリーはないかもだけど、なんだかなぁ。

穴子は薄っぺらくてフカフカした食感。やはりこれもバーナー炙りなので風味がなく冷めてる。煮詰めは悪くないけどおいしいという印象はない。赤酢の酢飯は悪くない。硬さもちょうどいいし、酢もいい塩梅。しかしタネが問題ですね。仕込みも仕上げももう少し頑張ってくれたらいいのに。アイデアは楽しいけど、その前にやることあるよねって感じです。でも親方は初めてでも打ち解けるように積極的に話してくれます(痛風だから塩は天敵と言う割にやたら塩のっけますよね)。フレンドリーなのは嬉しいし、スタッフもいい感じ。だからもう少しおいしくなるよう努力してもらえたら通うのに。本日のお会計、麦焼酎ソーダ割1杯と熱燗1合、つまみ4品、握り11貫、小丼と巻物とお吸い物と水菓子で20,490円。日本酒が2,727 円なんだけど銘柄は何だったのか? ぬる燗で頼んだけどめちゃ熱燗だった、残念!

綾⼦の⾃分勝⼿評価基準
おひとりさま度:ひとりではもちろんのこと、たとえ初めてでも楽しめるかどうか。また何か素敵なことが起こるか、客層はどうかも含む。
⼝福度=価格の満⾜度:鮨⾼騰の折、基準は⾷べて飲んで 4万円以下。おいしいは当然、⽀払いをした時にどう感じたか。
ロケーション&設え:「google map」で迷わずたどり着けるか。内観のセンス、器や酒器、トイレの清潔感など店内の印象。
サービス:スタッフの接客の満⾜度
のどの渇き度:完璧に個⼈的主観だが、塩分過多などでのどが乾くような味が苦⼿。評価は星が多いほど、のどは渇かないということ。

【評価】
おひとりさま度 ★★★★★
⼝福度=価格の満⾜度 ★
ロケーション&設え ★★
サービス ★★★
のどの渇き度 ★★★★

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⾼橋綾⼦
(たかはしあやこ)

フードパブリシスト。国内外ファッションブランドのプレスとして従事した中で肥えた“食”へのこだわりは、その後の素晴らしい人々との出会いと相まっていつしか人⽣そのものに。
その間に培った食のデータと人脈を武器に、年間 1000 軒ほどの外食で“喜ばれるレストラン”の発掘に勤しむ⽇々。「綾⼦のギョーカイ総受けグルメ手帖」「BRUTUS」「GQ」「食べログマガジン」「集英社オンライン」などに寄稿。BS フジ「リモート☆シェフ」では審査員として定期的に出演。
東京都主催の食の祭典、「Tokyo Tokyo Delicious Museum 2023」のプロデューサーに就任。また企業のメニュー開発やアドアイザーにも携わる。おいしいものしか喉を通らない不思議体質。