和食STYLE

⾼橋綾⼦のNO SUSHI, NO LIFE – 第四一回 「意気な寿し處 阿部 広尾本店」

第四一回 「意気な寿し處 阿部 広尾本店」

〆寿司に最高だったのに・・・

夜中までやってて、つまみも握りもお好みで頼めて、旬なものも揃ってておいしいから〆のお店として良く行っていた「意気な寿し處 阿部 広尾本店」。青山や六本木にもお店があるので、お店ごとにおいしさが違うとは聞いていましたが(握る人が違うんだから当たり前か)広尾本店はおいしいと思っていました。で、今回も〆にお鮨〜♪とフラッと行ってみたところ、どうした?ってことにな っていました。カウンターは若い女性同士やカップルでほぼ満席、テーブルもグループでほぼ満席という人気っぷり。おひとりさまの私は空いていたカウンタ ーに通されました。

ここまではいつもと変わらずですが、ここからが酷かった。まずオーダーを聞きにこない。仕方ないので「すみませ〜ん」と声をかけ、麦焼酎ソーダ割りと“新物”と書かれてあったので「揚げ銀杏」と「あん肝ポン酢」を一緒にお願いする。ほどなくドリンク→あん肝→銀杏の順番にテーブルに置かれました。銀杏は普通においしいのですが、あん肝が残念な味わい。どうした? でも個体差もあるしな。あん肝そのものがおいしくなかったのかもと気を取り直して、握りへ。

と、スタッフさんと目を合わせようとくるくるしてみたけど、だ〜れもこっちを見ない。あろうことか目の前の付け場にいる握り手 3 人すら、何だか大将とのおしゃべりに夢中でお客さんを見ていない。仕方ないので目の前にいるけど「すみませ〜ん、握りをお願いしたいんですけど」とちょっと大きめな声で言ってみる。すると「はい、どうぞ」と握りのメニューを渡してきた。え〜、今日はいい〇〇が入ってますよ〜とか、白身は〇〇と〇〇と〇〇がありますよとかって会話はないのか? 前はあったのにどうした? でも気を取り直して「ホッキ貝」とお願いしてみる。何じゃこりゃ、もたっとしてサクッと感がない。山葵は利きすぎて鼻が痛い。そして煮切りが濃くてしょっぱいぞ。

いやいや、今日のホッキ貝がいけないんだとさらに気を取り直して「炙りトロ」をお願いする。いつ炙った?というくらい早く置かれた握りは予想通り少しも温かくない。本当にどうした? そして握りが始まっているのに、握ったらすぐまた付け場でおしゃべりが始まり見向きもしない。仕方ないので目の前にいるけど「すみませ〜ん」と声を出す。すると「はい、何にしましょう」と愛想はいい。そうか、つまり言われたら仕事するというスタンスか。

大好きな「芽ねぎ」はシャキシャキした食感は素敵だが煮切りが濃すぎて台無し。もう嫌になってきたので最後に巻物でフィニッシュしようと「筋子巻き」をオーダー。さて、これが酷すぎた。巻きがゆるくて持った途端に海苔が外れて崩壊し、真ん中の筋子がポトリ。食べてみるとしょっぱすぎて2個が限界。さすがに「ちょっとしょっぱくて食べられません」と告げてお会計してもらいました。本日は麦焼酎ソーダ割り1杯とつまみ3品、握り3貫、巻物1品で6,600円。あ ぁ、いいお店だったのに。あと1回だけ行ってダメだったら諦めようかな。

綾⼦の⾃分勝⼿評価基準
おひとりさま度:ひとりではもちろんのこと、たとえ初めてでも楽しめるかどうか。また何か素敵なことが起こるか、客層はどうかも含む。
⼝福度=価格の満⾜度:鮨⾼騰の折、基準は⾷べて飲んで 4万円以下。おいしいは当然、⽀払いをした時にどう感じたか。
ロケーション&設え:「google map」で迷わずたどり着けるか。内観のセンス、器や酒器、トイレの清潔感など店内の印象。
サービス:スタッフの接客の満⾜度
のどの渇き度:完璧に個⼈的主観だが、塩分過多などでのどが乾くような味が苦⼿。評価は星が多いほど、のどは渇かないということ。

【評価】
おひとりさま度 ★★★
⼝福度=価格の満⾜度 ★
ロケーション&設え ★★
サービス ★
のどの渇き度 ★

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⾼橋綾⼦
(たかはしあやこ)

フードパブリシスト。国内外ファッションブランドのプレスとして従事した中で肥えた“食”へのこだわりは、その後の素晴らしい人々との出会いと相まっていつしか人⽣そのものに。
その間に培った食のデータと人脈を武器に、年間 1000 軒ほどの外食で“喜ばれるレストラン”の発掘に勤しむ⽇々。「綾⼦のギョーカイ総受けグルメ手帖」「BRUTUS」「GQ」「食べログマガジン」「集英社オンライン」などに寄稿。BS フジ「リモート☆シェフ」では審査員として定期的に出演。
東京都主催の食の祭典、「Tokyo Tokyo Delicious Museum 2023」のプロデューサーに就任。また企業のメニュー開発やアドアイザーにも携わる。おいしいものしか喉を通らない不思議体質。