和食STYLE

⾼橋綾⼦のNO SUSHI, NO LIFE – 第四〇回 波残

第四〇回 波残

玉三郎似の大将が握る、“疲れないお鮨”

赤坂でお昼の予定が急に空いて「よし、お鮨だ」と、行きたいお店に電話をかけて何とか入れたのがここ、「波残」。12時半過ぎに到着すると1組、すでに握りが始まっていました。基本的に予約マストだけど席が空いていたら当日電話でも受けてくれるそうです。ランチは握りのみか、つまみと握りの2種類のおまかせコース。当然つまみ付きをお願いしました。8席のカウンターに白いカバーの椅子、ナチュラルカラーの店内はとっても落ち着いていい感じ。付け場には坊主頭をカラーリングしているオシャレ大将の平井謙一郎さんが黙々とお仕事中です。こちらはつまみからの握りスタイル。初っ端に出た可愛らしいお花がのった「鰆のハーブ巻き」は「こんとび海苔」がしっとりと酢飯を纏い、ガリや大葉が鰆の脂をさっぱりとさせたほっぺたが落ちるつまみです。

なんか、ここ当たりじゃない?と次を待っていると「筋子醤油漬け」「秋刀魚塩焼き」「松茸茶碗蒸し」がテンポよく出てきます。若干、味が濃いめかな。平井さん、目が合ってもなんか喋ってくれず、初でポッチ飯だとちょっと困るかも。ガリが出てきたのでもう握りなんだ…、とか思っていたらやっぱり握りが始まりました。赤貝は独特の風味を感じず食感だけ。酢飯は粒が立ってほろっとほどけ、酢もいい塩梅。続いて白海老昆布締め、コハダ、ノドグロと続きます。全体的に酢飯は大きめ。鮨ダネはきっちり正しくお仕事され、コハダなんて切り付けも美しく酢飯の温度もバッチリ!

赤身の漬けは大間の鮪、これはおいしい! 何でも鉄分を含むので夏の赤身はおいしいそう。なので中トロは塩釜で 146kg。これもおいしい! 雲丹は釧路の紫と利尻のバフンを食べ比べさせてくれたり、たくあんの分量が絶妙なトロたくもおいしい! このあたりから平井さんが話してくれるようになり、気持ちもラクに。銀座のお鮨屋さんで基礎を学び、「宇田津 鮨」で応用力をつけ、熊本の和食屋さんを経て今のお店に来たそうです。確かにお花飾った「魚のハーブ巻き」、「宇津田 鮨」にあったな。

お米は3種のオーガニック米、お酢も3種をブレンド、これも「宇田津 鮨」の影響を受けているのね。海苔もタネによって変えているし、酢飯の大きさも合っているし、何かこう、バランスがいい握りです。穴子はふっくら炊き上がり、ぽ ってりまあるいフォルムも可愛い。このあとはお味噌汁と玉とデザートでフィニッシュ。

デザートが出る頃には平井さんとマンツーマンでおしゃべり。すご〜く勉強熱 心で目指す鮨道やおいしいレストランの話が楽しくて、気がつけば15時近くになっていました。つまみ4品、握り10貫、麦ソーダ割りと日本酒 1,5合で 13,300円。喉も乾かず食べ疲れしない、いいお鮨屋さんと出合ったな。

綾⼦の⾃分勝⼿評価基準
おひとりさま度:ひとりではもちろんのこと、たとえ初めてでも楽しめるかどうか。また何か素敵なことが起こるか、客層はどうかも含む。
⼝福度=価格の満⾜度:鮨⾼騰の折、基準は⾷べて飲んで 4万円以下。おいしいは当然、⽀払いをした時にどう感じたか。
ロケーション&設え:「google map」で迷わずたどり着けるか。内観のセンス、器や酒器、トイレの清潔感など店内の印象。
サービス:スタッフの接客の満⾜度
のどの渇き度:完璧に個⼈的主観だが、塩分過多などでのどが乾くような味が苦⼿。評価は星が多いほど、のどは渇かないということ。

【評価】
おひとりさま度 ★★★
⼝福度=価格の満⾜度 ★★★★
ロケーション&設え ★★★
サービス ★★★
のどの渇き度 ★★★★★

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⾼橋綾⼦
(たかはしあやこ)

フードパブリシスト。国内外ファッションブランドのプレスとして従事した中で肥えた“食”へのこだわりは、その後の素晴らしい人々との出会いと相まっていつしか人⽣そのものに。
その間に培った食のデータと人脈を武器に、年間 1000 軒ほどの外食で“喜ばれるレストラン”の発掘に勤しむ⽇々。「綾⼦のギョーカイ総受けグルメ手帖」「BRUTUS」「GQ」「食べログマガジン」「集英社オンライン」などに寄稿。BS フジ「リモート☆シェフ」では審査員として定期的に出演。
東京都主催の食の祭典、「Tokyo Tokyo Delicious Museum 2023」のプロデューサーに就任。また企業のメニュー開発やアドアイザーにも携わる。おいしいものしか喉を通らない不思議体質。