和食STYLE

EATRAVELLER HIROE の女子美食旅㉕ 京都「 俵屋旅館 」

ほの暗い玄関の土間に一歩足を踏み入れると、そこは陰翳礼讃の世界。日常から切り離され、まるで聖なる境地に導かれたかのように、氣の流れががらりと変わり、静謐で厳かな雰囲気に包まれました。

千年に渡り歴史を刻んできた京都、この場所で磨かれた古都のおもてなしの精神が国内外から多くの人を引き寄せ、海外の王族や各界の著名人にも愛されています。スティーブ・ジョブズやデヴィッド・ボウイが定宿にしていたということは、彼らがここで 新たなインスピレーションを見出していたことを物語っています。 数々のセレブリティを引き寄せる 俵屋旅館は、まさにパワースポット。
神社のような力強いエネルギーではなく、内に秘めたソフトパワーで人々を癒し続けているのです。

最近の高級老舗旅館では、食事を共同の御食事処で提供することが一般的ですが、俵屋ではお部屋出しで贅沢な食事が楽しめます。熱いものは熱いまま、冷たいものは冷たいまま、心を込めて運ばれてくる料理。湯上がりにプライベートな空間で、人目を気にせずリラックスできる部屋食は究極の贅沢です。その味わいは控えめでありながら品格があり、流行に走ることなく温かみを感じます。
特に朝食の湯豆腐は一言で言えば絶品。人間国宝の作品の鍋や、出汁の瓶はミニマルで美しいデザイン、お豆腐から薬味まで一切の妥協が感じられません。

俵屋旅館は、毎年全18室を1室ずつリノベーションしています。独自の美意識を大切にしながら、創造性かつ革新性を取り入れて、次世代へと受け継がれています。

四季折々の室礼(しつらい)は、どの季節に訪れても一期一会の出会いを体験させてくれます。私が俵屋旅館を訪れたのは中秋の名月の時。ロビーには兎の香合が飾られ、よく手入れの行き届いたお庭から愛でる満月は圧巻でした。

俵屋で過ごした穏やかなひとときは、自己の内面を探求し、新たな自分を発見する貴重な機会となりました。やはりこの宿はインスピレーションを与えてくれるのです。 美と静寂が共鳴する「俵屋旅館」、私にとってかけがえのない場所を見つけました。

評価基準
わざわざ度:わざわざ旅する価値があるか
唯一無二度:いわゆるオリジナリティ
リピしたい度:わざわざ行ってみて尚再び行ってみたいか

わざわざ度 ★★★★★

唯一無二度 ★★★★★

リピしたい度 ★★★★★

過去記事はこちらから

過去記事はこちらから

大野ひろえ

美食を求め旅するEATRAVELLER. その土地ならではの食材を使ったディスティネーションレストランからB級グルメまで幅広く巡ります。趣味は変態料理人探し。