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とんかつ3名士 河田部長の とんかつひとり旅㉓とんかつ蒼樹(横浜・上大岡)

京急上大岡駅から徒歩5程度、2021年12月にオープンした店です。小さい橋を渡ると、白いのれんが見えてきます。この店のご主人、守屋さんが、多くの店で採用されている銘柄豚、林SPFに惚れ込み、それを美味しくいただく手段としてとんかつを選んだようです。

店は明るくて清潔感があふれています。磨き上げられた銅鍋の前にご主人が立ち、油を丁寧にかき回しています。

こちらに訪問するのは二度目で、初回はもちろん林SPF豚のとんかつをいただいたので、今回はポップに本日のおすすめとして贅豚のロースかつ定食があげられていたので、そちらを注文しました。最近は林 SPF 以外の銘柄豚がゲスト豚として登場しており、贅豚はレギュラーに近い存在になっているようです。林 SPF はどちらかというとあっさりした味わいですが、贅豚はマンガリッツァ豚とデュロック豚の掛け合わせて、より濃厚な味が特徴です。目を惹くのはパン粉をつけた後の肉で、パン粉が大きめに挽かれているため、非常に大きく見えます。この店では店内で提供するパン粉は賠焼式、テイクアウト用は電極式のパン粉を使っているそうです。焙焼式は通常のパンと同じくオーブンで焼いたパンから作られており、軽い食感になります。ラードに白絞油をブレンドした油で揚げていますが、衣が口に全く当たることがありません。素直に肉の食感が伝わってきます。肉の旨みも口いっぱいに広がります。ヒマラヤ岩塩、花藻塩いずれも合います。

もう一つ特筆すべきは、ご飯を一人ずつ釜で炊いていることです。これをやっている店は非常に少ないのです。米は時期によって変わるようで、この日は千葉で美味しい米として知られる多古米のコシヒカリでした。美味しいご飯でとんかつを掻き込むのはまさに至福です。神奈川県だけでなく、全国でもトップクラスの店と言えるでしょう。

お勧めポイント
●粗めでありながら口当たりの良い衣
●一人ずつ釜で炊くご飯

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河田 剛

大手証券会社の調査業務に携わる傍らでグルメアナリストとしても活躍。さまざまな料理を食べ歩き、著書『ラーメンの経済学』(KADOKAWA)で話題に。料理の背景や素材、流通に至るまで、幅広い視点での鋭い洞察が特徴。