和食STYLE

⾼橋綾⼦のNO SUSHI, NO LIFE – 第三八回 立ち喰い鮨ブラボー

第三八回 立ち喰い鮨ブラボー

大きな声で「ブラボー」と叫ぶと良いことが!

池尻大橋駅から旧道を入っていくと左手にある白い大きな暖簾がかかった店内明るめな「立ち喰い鮨ブラボー」。大将の尾崎さんとバイトちゃんの2名で切り盛りしています。スタンディングだし、1 貫からオーダーできるし、偶然お隣に居合わせた人とも話したりできる(池尻ってなんかそういうお店が多い)のでおひとりさまにはもってこい。元々「立ち食い鮨まさ」が気になってチェックしていたら同じ場所でこのお店が食べログに載っていたので、とりあえず行ってみよう!と前日に予約、訊くとそこで働いていた尾崎さんが店舗は持ちたくないけどお鮨屋さんはやりたいなってことで平日だけ間借りしているそうです。

壁に貼られた「ブラボーなつまみ「ブラボーなネタ」「ブラボーなドリンクメニ ュー」を見て、握りは渡されたオーダーシートにチェックしてオーダーします。
基本的にみなさん「おまかせ12貫(6,500円)」を頼み、追加するってパターンなのであまりつまみを食べている人はいないのかも。でも、「かくや」って古漬けを塩抜きして醤油をかけたものらしいんですけど、ここはお漬物に胡麻鯖ものせてだし醤油で味付けしてあったり、漉した玉葱醤油漬けにした鮪の頰肉を炙ってバターソースをかけてあったり、品数は少ないながらなかなかイケてるつまみなんですよ。

握りもなかなかなものでどうも熟成させているタネが多いようで金目鯛もコハダもとろんとした舌触り。「カマトロ漬け」なんて本当にとろけちゃいます。「中トロ」や「赤身」は逆に歯ごたえがしっかりあって夏だからボストン産とは言ってたけど脂のりも悪くない。それになんと言っても酢飯がうまい! 白酢100%と思われますが「バーミキュラ」で炊いてるから?、なんかお米自体がおいしい。

鮨ダネによって酢飯の温度も変えているそうでこの「太刀魚」なんて熱々の酢飯なんですよ。なんでも焼きたての太刀魚が熱いから酢飯も熱くしているそうで、ちなみに鮪は 60 度くらいっていうからこれも相当熱々です。お米の粒は立っていますが「カマトロ漬け」はネッチョリ感がありました。反対に「のどぐろ」はさらりと解けてくれるのでどうやらタネの脂や水分に準じているのかもしれません。

感激したのは「半熟いくら」。ねっちゃりとろとろ悶絶しました。思わず「ブラボー」と叫び、作り方まで教えてもらったのですが酔っ払って書いたのでさっぱりわからず。ざっくり言うと沸かした出汁で筋子をバラし、醤油と2倍のお酒で薄めた地でゆっくり70度まで温度を上げながら煮て氷水に漬けるとできるみたい。いやいや、本当にどれもブラボーで気が付けば2時間以上居座り、つまみ3品、握り12貫、ハイボールと日本酒 3 合で 16,680 円とまあまあのお値段に。「おまかせ12貫」を頼めばかなりリーズナブルでおいしいお鮨が食べられるってことです。おまけに前日、いや当日でも入れちゃうっていうのが素敵! ただし通りすがりのご近所常連さんは満席ってお断りされていたので予約はマストかも。そうそう「ブラボー」と叫ぶと 1 貫サービスしてくれるので思いっきり叫びましょう!

綾⼦の⾃分勝⼿評価基準
おひとりさま度:ひとりではもちろんのこと、たとえ初めてでも楽しめるかどうか。また何か素敵なことが起こるか、客層はどうかも含む。
⼝福度=価格の満⾜度:鮨⾼騰の折、基準は⾷べて飲んで 4万円以下。おいしいは当然、⽀払いをした時にどう感じたか。
ロケーション&設え:「google map」で迷わずたどり着けるか。内観のセンス、器や酒器、トイレの清潔感など店内の印象。
サービス:スタッフの接客の満⾜度
のどの渇き度:完璧に個⼈的主観だが、塩分過多などでのどが乾くような味が苦⼿。評価は星が多いほど、のどは渇かないということ。

【評価】
おひとりさま度 ★★★★★
⼝福度=価格の満⾜度 ★★★★
ロケーション&設え ★★★
サービス ★★★★
のどの渇き度 ★★★★

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⾼橋綾⼦
(たかはしあやこ)

フードパブリシスト。国内外ファッションブランドのプレスとして従事した中で肥えた“食”へのこだわりは、その後の素晴らしい人々との出会いと相まっていつしか人⽣そのものに。
その間に培った食のデータと人脈を武器に、年間 1000 軒ほどの外食で“喜ばれるレストラン”の発掘に勤しむ⽇々。「綾⼦のギョーカイ総受けグルメ手帖」「BRUTUS」「GQ」「食べログマガジン」「集英社オンライン」などに寄稿。BS フジ「リモート☆シェフ」では審査員として定期的に出演。
東京都主催の食の祭典、「Tokyo Tokyo Delicious Museum 2023」のプロデューサーに就任。また企業のメニュー開発やアドアイザーにも携わる。おいしいものしか喉を通らない不思議体質。