和食STYLE

⾼橋綾⼦のNO SUSHI, NO LIFE – 第三七回 鮨つぼみ

第三七回 鮨つぼみ

「鮨さいとう」の若手が握るEXILE経営ゆえの活気

かれこれ4〜5年前にオープンした「鮨つぼみ」は、あの「鮨さいとう」 の大将、齋藤 孝司さんがプロデュース、EXILEの事務所「 LDH」が経営者として一緒に立ち上げた超話題のお鮨屋さんです。プロデュースって言っても名前貸し程度のお店もある中、こちらは「鮨さいとう」の若手が“出向”して握っています。なので完全“齋藤イズム”を継承しており、かなり神的存在として崇めておいででございます。

故に酢飯も鮨ダネもぜ〜んぶ本家のものと同じで、若手が握るってことで 2/3くらいのお値段ってやつです。このところそんなセカンドライン店に行く機会が増えたなぁ。それだけ流行っているってことか。さて、こちらはいかがなものかと申しますと。かなりいい!です。本日は先につまみが 8品出て、握りが 10貫、お稲荷さんと巻物、味噌汁、玉という構成。 つまみは本家の定番とこちらのオリジナルが半々くらいらしいです。
「のどぐろの焼物」は焼き方まで本家のまま(そこで教えてもらってるのだから当たり前か)。ま、醤油の塗り方や塩の振り方も伝統(と言えるほど長くないけど)を守っているそう。でもふっくらやわらか、中からジュワ〜っと肉汁ならぬ魚汁が溢れて、確かにおいしい。魚ってきれいに卸すと艶が出るんですって!

さて握りはと言いますと、本当に若手か?と疑いたくなるほど完成度がめちゃ高いです。甘鯛は 身が分厚く切りつけているけどシコシコとした食感で弾力も申し分ない。昆布締めではなく薄く塩を振っているだけなので甘鯛のうまみが存分に活かされています。特筆すべきは酢飯の温度。鮪には炊き立てホヤホヤの酢飯を合わせ、鮪の脂が溶けてまろやかで香りも豊かになる。ついでに鮨ダネの仕込みもいい感じで赤身漬けなんかも漬ける時間がパーフェクト。濃くも薄くもなく本当にいい塩梅。山葵の量もかなり好みでチョイピリ加減が合ってます。

それでもってこの酢飯、粒の立ち方もいいんです。ほろりと解けるのは鮨さいとう仕込みだから当然として、どれもなぜか最後にひと粒ふた粒 が口の中に 残るんですけど、これ を噛み締めると うまいっ! 「すごいね」って言うととにかく齋藤さんの味を忠実に守ってますと言い切る。「他に好きなお鮨屋さんは?」って聞いても「いやぁ、もう親方が」って、もう世界はひとつって感じ。

穴子も小骨ひとつ見当たらない丁寧な仕事で、そこら辺の偉そうなベテランよりよっぽど頑張っていて好感が持てます。ってことで予約は 4〜 6ヶ月待ち。 そのせいか どうやらお店の奥の内緒 だった 個室が一般公開されたようで、もちろんこちらの大将さんのさらに若手が握るそうですが、そちらなら予約が取れそう。おまけに誰にも見つからず裏から入れるそうなのでお忍びの方はぜひ個室へ。本日のお会計、麦焼酎ソーダ割と日本酒 3合で 31,020円也。予約取れたらまた行きたいけど、めちゃ手がお 酢 臭くてちょっと困った。

綾⼦の⾃分勝⼿評価基準
おひとりさま度:ひとりではもちろんのこと、たとえ初めてでも楽しめるかどうか。また何か素敵なことが起こるか、客層はどうかも含む。
⼝福度=価格の満⾜度:鮨⾼騰の折、基準は⾷べて飲んで 4万円以下。おいしいは当然、⽀払いをした時にどう感じたか。
ロケーション&設え:「google map」で迷わずたどり着けるか。内観のセンス、器や酒器、トイレの清潔感など店内の印象。
サービス:スタッフの接客の満⾜度
のどの渇き度:完璧に個⼈的主観だが、塩分過多などでのどが乾くような味が苦⼿。評価は星が多いほど、のどは渇かないということ。

【評価】
おひとりさま度 ★★★★
⼝福度=価格の満⾜度 ★★★
ロケーション&設え ★★★
サービス ★★★★
のどの渇き度 ★★

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⾼橋綾⼦
(たかはしあやこ)

フードパブリシスト。国内外ファッションブランドのプレスとして従事した中で肥えた“食”へのこだわりは、その後の素晴らしい人々との出会いと相まっていつしか人⽣そのものに。
その間に培った食のデータと人脈を武器に、年間 1000 軒ほどの外食で“喜ばれるレストラン”の発掘に勤しむ⽇々。「綾⼦のギョーカイ総受けグルメ手帖」「BRUTUS」「GQ」「食べログマガジン」「集英社オンライン」などに寄稿。BS フジ「リモート☆シェフ」では審査員として定期的に出演。
東京都主催の食の祭典、「Tokyo Tokyo Delicious Museum 2023」のプロデューサーに就任。また企業のメニュー開発やアドアイザーにも携わる。おいしいものしか喉を通らない不思議体質。