和食STYLE

⾼橋綾⼦のNO SUSHI, NO LIFE – 第三六回 立喰 鮨となり

第三六回 立喰 鮨となり

立ち食い鮨の立役者

こちらは高級鮨店「秦野よしき」の2号店。隣にあるから「鮨となり」なんでしょうね。本店は何度も通っていたのですが、こちらはお初。高級鮨店のタネと酢飯なのに 若手が握るから、さらに立ち食いだから リーズナブルっていう、いわゆるセカンドライン。 立ち食い鮨 って 、何となく “安かろう不味かろう”ってイメージが拭いきれずにいたところ、 この お店のオープン で 世の中にはイケてる立ち食い鮨があるんだと認知 されたように思います。 当日でも OKなんですが予約制、しかも 1時間単位っていうのがちょっともどかしい。

コロナ禍でのオープンだからかオーダーはタッチパネル。おまかせ10貫(6,600/9,900)っていうのをみなさん頼まれるようですが、本日は試食会の後だったのでアラカルトで。目の前に 店長(ここは大将とは呼ばないらしい) がいるのに2〜3貫ごとタッチパネルを使うのは面倒だし、話しかけづらいし何だか居心地悪いなぁと思ってメニューを眺めていると、産地やオヤジギャグ的なおすすめの一言が添えられていたりして頑張っている。 そうかこれは コロナ対策なのか!と気を取り直して、 店長 に「 これって面倒ですよね〜」と言ってみた。それからは和気藹々、4〜5貫で帰ろうと思っていたけど結局1時間フル活用。

ということでつまみは食べずに旬な握りオンリーで。「攻めてます 」と言う白酢の酢飯は酸が強め。粒感はしっかりあるけどやわらかめです。煮切りも少し濃い目かな。でもタネはやはりいい感じで、鯵なんてむっちり。新烏賊は生姜を利かせているし、車海老は芥子漬けしておぼろをのせているしで手が込んでます。訊けばここにはガス台がないから仕込みはすべて本店で行なって、えっちらおっちら運んでいるとのこと。

「秦野よしき」ならではの「茄子揚げ浸し」「ツナマヨ手巻き」「おはぎ」など個性派もありながら江戸前もきっちりあって1貫でもよくて回転寿司並みに明朗会計というのはなかなか魅力的です。つまみ は 品数が限られて いますが、握りは白身も鮪も貝も雲丹も巻物も網羅されているので普通にお腹いっぱいになりそう。ただし 1時間交代制なのでもたもたしていると終了時間になります。でもカウンターの高さなのか、結構疲れるので1時間ってちょ うどいいのかもしれません。

本日のお会計、レモンサワー1杯と日本酒 1合、握りが新烏賊、鯵、春子 鯛、車海老、金目鯛、ツナマヨ巻き、くろむつの7貫で9746円でした。 こりゃ、おまかせ10貫の方がお得だったかも。個室は着席だけどおまかせ10貫がデフォルト。追加はできるそう。あ、こちらのお店「 TONARI」という名でロンドン・メイフェアに2号店がオープンしたそうです。すごいな芳樹さん。

綾⼦の⾃分勝⼿評価基準
おひとりさま度:ひとりではもちろんのこと、たとえ初めてでも楽しめるかどうか。また何か素敵なことが起こるか、客層はどうかも含む。
⼝福度=価格の満⾜度:鮨⾼騰の折、基準は⾷べて飲んで 4万円以下。おいしいは当然、⽀払いをした時にどう感じたか。
ロケーション&設え:「google map」で迷わずたどり着けるか。内観のセンス、器や酒器、トイレの清潔感など店内の印象。
サービス:スタッフの接客の満⾜度
のどの渇き度:完璧に個⼈的主観だが、塩分過多などでのどが乾くような味が苦⼿。評価は星が多いほど、のどは渇かないということ。

【評価】
おひとりさま度 ★★★★★
⼝福度=価格の満⾜度 ★★★
ロケーション&設え ★★
サービス ★★★
のどの渇き度 ★★★★

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⾼橋綾⼦
(たかはしあやこ)

フードパブリシスト。国内外ファッションブランドのプレスとして従事した中で肥えた“食”へのこだわりは、その後の素晴らしい人々との出会いと相まっていつしか人⽣そのものに。
その間に培った食のデータと人脈を武器に、年間 1000 軒ほどの外食で“喜ばれるレストラン”の発掘に勤しむ⽇々。「綾⼦のギョーカイ総受けグルメ手帖」「BRUTUS」「GQ」「食べログマガジン」「集英社オンライン」などに寄稿。BS フジ「リモート☆シェフ」では審査員として定期的に出演。
東京都主催の食の祭典、「Tokyo Tokyo Delicious Museum 2023」のプロデューサーに就任。また企業のメニュー開発やアドアイザーにも携わる。おいしいものしか喉を通らない不思議体質。