和食STYLE

⾼橋綾⼦のNO SUSHI, NO LIFE – 第三三回 鮨 一喜

第三三回 鮨 一喜

江戸前をアレンジした楽しい鮨

とあるお鮨屋さんで偶然お隣の席になった「鮨 一喜」の大将、喜代永隆文さん。当然、「お店行きます」となりまして初訪問。予約した18時の5分前に着き普通に入って行ったら「まだダメです!」と追い出されました。まぁ、確かに暖簾がかかってなかったけど5分前なんだからさぁ、入れてくれたっていいじゃないと思いながら一旦外へ。でも5分ってどこにも行けないし近所にコンビニもないしどうしたもんかとうろうろ歩いては戻り、また歩いては戻りを繰り返すこと3回目にして人が入っているのを発見! 「なんだよ、入れるんじゃん」と出戻りました。

気を取り直していつものように麦焼酎ソーダ割りを飲み始めた頃に喜代永さんが登場。こちらはまずつまみが5品、続いて握りが4貫、またつまみに戻って2品、握り8貫でてから玉とお椀という流れ。月曜の18時でカウンターは満席、どうやらみなさん馴染み客のようです。少しするとテーブル席もいっぱいになり、千歳船橋だし、食べログだって3.5以下だし、私の周りから聞いたこともなかったので正直、完全に舐めてました。めちゃ人気店じゃないですか。

まずは噴火湾の毛蟹にじゅんさいとピンクグレープフルーツをあしらい、土佐酢のジュレをかけたキラキラ系のつまみからスタート。中にクルミが入った胡麻豆腐や昆布のうまみが抜群の鱧のお椀、タカベのお造り、蒸し鮑が順に出てきます。握りの後に出た目光の焼き加減、身はホクホク皮はパリパリで素晴らしかったな。すべて手がこんでいて盛り付けも美しい、そしてまぁまぁなボリュームでいい感じ。あとで聞いたら喜代永さん、10年以上も和食店での経験があるって言うじゃないですか。なるほど、つまみのセンスがいいわけです。

続いて握りが鱸、白烏賊、鯵、目鯛と連続で4貫。米は「みずほの輝き」と「東北194号のミルキークイーン」を使い、硬くもやわらかくもなく粒はしっかりと際立った炊き方で3 種類の赤酢をブレンドして合わせた酢飯は、どの鮨ダネにも合って酸味もほどよくいいバランスです。ちょっと気になったのが握りが6手と多いこと。だからと言って酢飯がほどけないわけではないのでいいんですけど。

鮪はイマイチだったけど(ま、夏だしね)イシガキガイも雲丹も煮蛤もおいしい。でも車海老は甘酢漬けにしてゴリゴリの食感で、干瓢巻きは干瓢も酢飯も熱々でワサビも強め。こんな車海老も干瓢巻きも初めてです。最後の玉も冷たくて本当にクリームブリュレみたいな玉でした。真っ当な江戸前を追求しつつ独特でおもしろい。こういう攻めの感じ好きです。車海老の甘酢はあまり好みじゃなかったけど干瓢巻きは熱々もいいかなと思いました。本日のお会計、麦ソーダ割り2杯と日本酒を4合ほどで20,320円也。いい感じのお値段じゃないですか。でも千歳船橋っていうのが私の場合足が向かなくなっちゃうかも。

綾⼦の⾃分勝⼿評価基準
おひとりさま度:ひとりではもちろんのこと、たとえ初めてでも楽しめるかどうか。また何か素敵なことが起こるか、客層はどうかも含む。
⼝福度=価格の満⾜度:鮨⾼騰の折、基準は⾷べて飲んで 4万円以下。おいしいは当然、⽀払いをした時にどう感じたか。
ロケーション&設え:「google map」で迷わずたどり着けるか。内観のセンス、器や酒器、トイレの清潔感など店内の印象。
サービス:スタッフの接客の満⾜度
のどの渇き度:完璧に個⼈的主観だが、塩分過多などでのどが乾くような味が苦⼿。評価は星が多いほど、のどは渇かないということ。

【評価】
おひとりさま度 ★★
⼝福度=価格の満⾜度 ★★★
ロケーション&設え ★★
サービス ★★★
のどの渇き度 ★★★★

過去記事はこちらから

過去記事はこちらから

⾼橋綾⼦
(たかはしあやこ)

フードパブリシスト。国内外ファッションブランドのプレスとして従事した中で肥えた“食”へのこだわりは、その後の素晴らしい人々との出会いと相まっていつしか人⽣そのものに。
その間に培った食のデータと人脈を武器に、年間 1000 軒ほどの外食で“喜ばれるレストラン”の発掘に勤しむ⽇々。「綾⼦のギョーカイ総受けグルメ手帖」「BRUTUS」「GQ」「食べログマガジン」「集英社オンライン」などに寄稿。BS フジ「リモート☆シェフ」では審査員として定期的に出演。
東京都主催の食の祭典、「Tokyo Tokyo Delicious Museum 2023」のプロデューサーに就任。また企業のメニュー開発やアドアイザーにも携わる。おいしいものしか喉を通らない不思議体質。