和食STYLE

EATRAVELLER HIROEの女子美食旅 ⑱ 長野県 松本十帖「三六五+二」

信州松本の温泉郷、浅間温泉にある老舗旅館をリノベーションして誕生した「松本十帖」は、2つのホテル(松本本箱、小柳)と2つのレストラン、ブックストア、ベーカリー、ショップ、2つのカフェから成る複合施設。新潟で人気を誇る「里山十帖」や、本に囲まれる夢の時間を実現した「箱根本箱」の姉妹館です。

大浴場をリノベーションした「オトナ本箱」、迷路で謎解きスタイルな「こども本箱」など5つのエリアに分かれた書店は、ブックディレクター幅允孝氏やYOURS BOOK STOREのセレクションの書籍が1万冊以上にも及び、ローカル・ガストロノミーを掲げる薪火グリルダイニング 「三六五+二(367)」の壁にも食にまつわる本がずらりと並びます。

こちらのレストランは、365日、日々変わる信州の風土を表現するだけでなく、文化と歴史(+2)も感じられる料理を提供するというコンセプトです。信州に流れる日本一の大河 「信濃川・千曲」 の総延長 は367キロ。その八ヶ岳や北アルプスの源流である「信濃川・千曲」を経て運ばれた食材や食文化の歴史をくみ取り、海のない長野県に新潟県から日本海の食材をも融合させ、新しいローカル・ガストロノミーを創造しています。壮大なストーリーですね。

薪火の利点を生かした自慢のグリル料理は、 信州の厳選素材を絶妙に火入れするだけでなく、時に強火で炙ったり敢えて焦げ目をつけたり、たゆたうスモークで燻香を纏わせたりと、薪火ならではのスタイルを十二分に発揮しています。シェフの遊び心とテクニックが十分に感じられます。

この日のメインは、上田産の真田丸という地鶏を薪火でじっくりとグリル。肉汁がしっかり留まりとってもジューシーでした。在来種を自然栽培している生産者さんからの野菜や、信州の地鶏・ジビエは本当に美味しいので、それを使った料理は当たり前ですが自然と美味しくなります。石川大シェフの作る料理は素材 の魅力を最大限に表現したものばかりでした。

また、信州には発酵文化が培われており、冬は特に保存食が多くおのずと発酵食品が身近な食材となっています。味噌や果実酒のように、発酵食品は特別なものというよりも当たり前にあるもの。ゆえに地域性の高い様々な発酵食品に挑戦しているそうです。この日いただいた糠とぬか漬けを使ったスープは酸味控えめで優しい口当たり、とても印象に残った一皿でした。

「松本十帖」ではオリジナル商品にも力を入れており、敷地内で醸造されるフレッシュな自家製シードルのほか、朝食メニューで人気の味噌風味のグラノーラなど、お土産にも最適。 素敵な本に囲まれながらゆったり温泉を満喫し、ローカル・ガストロノミーを体験する。 新しい休日スタイルを「松本十帖」で是非体験してみて下さいね!

評価基準
わざわざ度:わざわざ旅する価値があるか
食材への愛:生産者さんへのリスペクト、食材のポテンシャルをどこまで引き出せるか
地産地消度:地元で生産されたものをどれだけ消費しているか
唯一無二度:いわゆるオリジナリティ
リピしたい度:わざわざ行ってみて尚再び行ってみたいか

わざわざ度 ★★★

食材への愛 ★★★★

地産地消度 ★★★★★

唯一無二度 ★★★★

リピしたい度 ★★★★

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大野ひろえ

美食を求め旅するEATRAVELLER. その土地ならではの食材を使ったディスティネーションレストランからB級グルメまで幅広く巡ります。趣味は変態料理人探し。