和食STYLE

⾼橋綾⼦のNO SUSHI, NO LIFE – 第三二回 鮨なが井

第三二回 鮨なが井

バイク好きのコワモテ店主による女子力高いつまみとハイレベルな握り

こちらは世田谷区東松原というまあまあローカルな場所にありながら、予約困難で有名なお店。誰か誘ってくれないかなぁと思っていたら、ご紹介でおひとりさま席をGET。お初にしておひとりさま、まさにこの連載向けのシチュエーションでございます。予約完了するとすぐに女将さんから予約内容確認メッセージが届き、返信することで予約確定になります。さらに5日前にも確認メッセージが届き、ここでアレルギーや苦手食材をお伝えします。とても丁寧な文章できっといいお店なのだろうと予測できます。

当日は遅刻しないように注意して暖簾をくぐると、着物姿の可愛らしい女将さんにいちばん奥へ案内されました。私以外は常連さんでご家族だったりご夫婦でいらしていて、おひとりさまだとちょびっとアウエー感があります。そこへ大将の永井大輔さんが登場。紺色の作務衣に黒マスクで若い頃はヤンチャしてましたって雰囲気の少々コワモテな永井さんですが、「いらっしゃいませ」という笑顔には優しさがあふれています。ドリンク担当は女将さん。テーブルには日本酒の説明書きが置かれ、価格も普通で安心します。おふたりともいろいろ話しかけてくれて心穏やかになったところでおまかせコースが始まります。

こちらはおつまみが出た後に握りというスタイル。カウンター越しにおつまみができあがる様子がみえるのですが、「え、なんか可愛いんですけど」って盛り付け。カボチャ豆腐には丸くくり抜いたじゃがいもとトマトの甘酢をのせてカボチャチップスをさしたり、鱧とじゅんさいの上にはブルーベリーとクランベリーをのせたりという、色鮮やかでルンルンな女子力高いおつまみが出るわ出るわ。ちょっとしたフレンチや料亭って感じなのです。そして手渡される大将の爪がピカピカ! ネイルサロンでお手入れしていらっしゃるご様子。なんてこった! 見た目とのギャップに萌えます。

握りは裏に包丁を80ヶ所も入れ表に返して、自家製山椒塩を振ったねっとり感がものすごい烏賊から。これはもうおいしい笑顔しかありません。他には昆布〆の牡丹海老に塩昆布をのせたり、砂糖で〆てマイナス60℃で凍らせるというテクニックを使いとろんとろんの食感に仕上げた胡麻鯖、鮪はアイルランド産だし、海苔はヒーター付きの箱で管理していたり、高級食材ではないのに永井さんの腕でおいしくしている感じ。

握りの前にはお手拭きを交換してくれ、胡麻鯖の時には黒いまな板に、鯵を捌くときは黒手袋に変えるなどホスピタリティー度も高い。こりゃ、予約取れないわけです。予約方法はみんな平等、Facebookに予約開始日時が発表されるので、メッセンジャーかHPからメッセージを送ります。先着順でお返事がくるのであとは前述したとおり。本日はおつまみ5皿に握りが8貫、追加で新子と究極のネギトロ巻き、麦焼酎ソーダ割りを2杯と日本酒5 杯で25,800円でした。予約取るぞ〜!

綾⼦の⾃分勝⼿評価基準
おひとりさま度:ひとりではもちろんのこと、たとえ初めてでも楽しめるかどうか。また何か素敵なことが起こるか、客層はどうかも含む。
⼝福度=価格の満⾜度:鮨⾼騰の折、基準は⾷べて飲んで 4万円以下。おいしいは当然、⽀払いをした時にどう感じたか。
ロケーション&設え:「google map」で迷わずたどり着けるか。内観のセンス、器や酒器、トイレの清潔感など店内の印象。
サービス:スタッフの接客の満⾜度
のどの渇き度:完璧に個⼈的主観だが、塩分過多などでのどが乾くような味が苦⼿。評価は星が多いほど、のどは渇かないということ。

【評価】
おひとりさま度 ★★★★
⼝福度=価格の満⾜度 ★★★★
ロケーション&設え ★★
サービス ★★★★
のどの渇き度 ★★★★

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⾼橋綾⼦
(たかはしあやこ)

フードパブリシスト。国内外ファッションブランドのプレスとして従事した中で肥えた“食”へのこだわりは、その後の素晴らしい人々との出会いと相まっていつしか人⽣そのものに。
その間に培った食のデータと人脈を武器に、年間 1000 軒ほどの外食で“喜ばれるレストラン”の発掘に勤しむ⽇々。「綾⼦のギョーカイ総受けグルメ手帖」「BRUTUS」「GQ」「食べログマガジン」「集英社オンライン」などに寄稿。BS フジ「リモート☆シェフ」では審査員として定期的に出演。
東京都主催の食の祭典、「Tokyo Tokyo Delicious Museum 2023」のプロデューサーに就任。また企業のメニュー開発やアドアイザーにも携わる。おいしいものしか喉を通らない不思議体質。