和食STYLE

⾼橋綾⼦のNO SUSHI, NO LIFE – 第三〇回 鮨由う翼

第三〇回 鮨由う翼

高級店の鮨をリーズナブルに食べる

本店と同じ酢飯と鮨ダネなのに価格は半分くらいの“セカンドライン”が登場し始めたのは2019年頃だったと記憶しています。その理由のほとんどは若手が握る“若手育成”ってやつです。お鮨屋さんの修業って 10年以上と言われていて、ホリエモンさんの「 寿司アカデミーで数ヶ月ノウハウを学べば寿司屋になれる」って斬新な ご意見が話題になったせいかはわかりませんが、若手に活躍の場を与えようというお店が増えたことは事実。こちらもそんな感じで六本木の高級鮨店「鮨由う」のセカンドラインです。

メニューは飲み放題付きのおまかせコースのみで13,200円。食べログ情報によると本日の握り10貫程度+小鉢+焼物+わかめ+茶碗蒸し+玉子焼き+お椀+プリン巻という内容。本日は「嶺岡豆腐」「もずく酢」「あおさ入り玉子焼き」など、 つまみ6品のあとに握りが12貫 。玉子焼きは熱々であおさを入れたのはよかった。「とうもろこしの餡かけ茶碗蒸し」は穴子とクリームチーズが中に入っていて、半分食べたら味変で「酢飯」と「自家製海苔醤油」が投入されました。混ぜると鍋の〆雑炊みたいになっておもしろい!

そうそう、ひと品目が出たあたりで追加できるものが説明されます。本日は「ボタンエビ ウニを添えて」「ノドグロ塩焼きにして磯部巻」「ホタテの磯部巻」の3つ。とりあえず「ボタンエビ」を頼んでみたけど見た目も味も普通。 お椀にボタンエビの頭が 2つ入っていたのは嬉しかったけどね。そのあと、つまみが 2品出て握りへ。「春子鯛」「 5日寝かせた金目鯛」「皮目を炙った鰹」などの王道とオリジナルがいくつか。あん肝ペーストを混ぜた酢飯 の上にきゅうりをのせ海苔で包む「プリン巻」はあの「照寿司」よろしく「プリンまき〜、あざっす」とか言いながら微妙によくわからないパフォーマンスとともに手渡しされます。若い子ちゃんなら「キャァ〜、楽しい〜」ってことになるんでしょうが、いい歳こいた人間にとっては???で、それよりもうちょっと握り頑張れよと言いたくなる。

酢飯は山形の「つや姫」に数種類の酢をブレンドした赤酢を使い、優しくしっとりめに仕上げています 。決してまずいわけじゃないのですが、「大トロ」の筋が噛みきれない 、「蝦蛄」 はモサモサ の食感、「鮪」は日本 では 獲れない時期のせいかもだけどボストン産 、これがこの価格ってことなんでしょう。おまけにお腹いっぱいになるかわからない最初の段階で追加オーダーを取る、毛蟹とウニをのせて海苔で包む「港区巻」にキャビアをのせたら追加料金、スペシャルな日本酒(本日は而今)も追加料金って追加の押し売りはちょっと気に入らない。そんなの聞いてたら2万円超えてくるので飲み放題付きコースって謳ってるくせ になんか騙された感が否めないし、つまみも握りもイマイチ「おいしい!」と言えなかったり、パフォーマンスは余計だと思ってしまったり 、なので私は1回行けばいいかな。本日のお会計は15,200円でした。「 ボタンエビ の ウニ 添え」は2,000円だったのね。

綾⼦の⾃分勝⼿評価基準
おひとりさま度:ひとりではもちろんのこと、たとえ初めてでも楽しめるかどうか。また何か素敵なことが起こるか、客層はどうかも含む。
⼝福度=価格の満⾜度:鮨⾼騰の折、基準は⾷べて飲んで 4万円以下。おいしいは当然、⽀払いをした時にどう感じたか。
ロケーション&設え:「google map」で迷わずたどり着けるか。内観のセンス、器や酒器、トイレの清潔感など店内の印象。
サービス:スタッフの接客の満⾜度
のどの渇き度:完璧に個⼈的主観だが、塩分過多などでのどが乾くような味が苦⼿。評価は星が多いほど、のどは渇かないということ。

【評価】
おひとりさま度 ★★★
⼝福度=価格の満⾜度 ★★
ロケーション&設え ★★★
サービス ★★
のどの渇き度 ★★★★

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⾼橋綾⼦
(たかはしあやこ)

フードパブリシスト。国内外ファッションブランドのプレスとして従事した中で肥えた“食”へのこだわりは、その後の素晴らしい人々との出会いと相まっていつしか人⽣そのものに。
その間に培った食のデータと人脈を武器に、年間 1000 軒ほどの外食で“喜ばれるレストラン”の発掘に勤しむ⽇々。「綾⼦のギョーカイ総受けグルメ手帖」「BRUTUS」「GQ」「食べログマガジン」「集英社オンライン」などに寄稿。BS フジ「リモート☆シェフ」では審査員として定期的に出演。
東京都主催の食の祭典、「Tokyo Tokyo Delicious Museum 2023」のプロデューサーに就任。また企業のメニュー開発やアドアイザーにも携わる。おいしいものしか喉を通らない不思議体質。