和食STYLE

⾼橋綾⼦のNO SUSHI, NO LIFE – 第二九回 鮨ゆう子

第二九回 鮨ゆう子

週2日の間借り営業で腕を磨く女性鮨職人

「ビストロを間借りしてるお鮨屋さんがありますよ」とグルメで有名な方からのお誘いを即決したのは「鮨ゆう子」という店名だったから。有無を言わせず女性が握るとわかって、さらになんかこう昭和のスナック的な雰囲気を醸すじゃないですか。そして裏浅草ってこれまた 店名にピッタリだけどお店自体はビストロってこともいったいどうなっちゃうの?って感じで、もうワクワクしかないです。ビストロの休業日の火、水曜だけ間借りして1回転で営業、だから店の看板は「close」となっていて、店内からの灯りももれないので「 本当にここでいいのか?」と 思いながら恐る恐る扉を開けると、めちゃくちゃ可愛らしい笑顔で店主、鈴木裕子さんが迎えてくれます。

いつものように麦焼酎のソーダ割りを頼みひと息ついたところにつまみから。 最初が「ムギイカの煮付け 肝ソース」だったで、この後の展開を訊くと3品のあとは握りが始まるとのこと。ならばと早々に冷酒をお願いしておく。続いて玉葱のドレ ッシング仕立てのソースがおいしい「鰹とクレソン」、「とうもろこしのすり流しが載った茶碗蒸し」が供される。ビストロの器を使うせいか、食材や味付けや盛り付けに “洋”のエッセンスが見え隠れするのはおもしろい。 そして握りが5貫、「素麺」が箸休め的に登場し、握りの後半で7貫という流れ。酢飯は茨城のコシヒカリに梅酢と赤酢2種をブレンド。酢はわりとキツく感じたけど喉はかわかないから不思議。お米の粒が立っていて硬めに炊いている印象です。

1貫目は「メイチダイ」を煎り酒で。弾力が凄くてこの酢飯に合ってるなと思いました。煮切りではなく煎り酒っていうのもこの鮨ダネと相性がいい! こういう始まりだと期待しちゃいます。続いて「イシガキガイ」「鯵」 がきて「アカムツの一夜干し」は深皿に入ってきました。なにやらアカムツの脂をスプーンで酢飯と混ぜて食べてほしいと。洋皿なのでこういうアイデアが出るのかも? おもしろいけど、う〜ん、なんかもうひとつ香りとか味にインパクトがあっても良かったかな。むしろ箸休めの「焼き茄子の素麺」がいい! 大抵のお店が雲丹とかイクラのひと口丼を出してお腹膨れさせる作戦に出るところだけど、素麺は本当に“箸休め”になります。

そのあと「鮪」「コハダ」「穴子」などで江戸前らしさを感じさせ、最後が「鰹節」。海苔の上に酢飯ときゅうりと茗荷、削りたての鰹節をたっぷりのせて手巻きでガブリ! シャキシャキとした食感と鰹節の香りに包まれ、〆るにしても追加するにしても口の中がいい感じになります。おいしいし、他にはなくていい!おまかせコースで7,500円というプライスは まだトライしている段階だからかもしれません。ただ自分のやりたい鮨道は見えているようですし、あとは実戦で技術を磨いて良きタイミングで実家のお店を 継げればいいんじゃないかな。 女性の鮨職人、応援したいですね。本日のお会計、麦焼酎ソーダ割と日本酒グラス5杯で12,000円也。

綾⼦の⾃分勝⼿評価基準
おひとりさま度:ひとりではもちろんのこと、たとえ初めてでも楽しめるかどうか。また何か素敵なことが起こるか、客層はどうかも含む。
⼝福度=価格の満⾜度:鮨⾼騰の折、基準は⾷べて飲んで 4万円以下。おいしいは当然、⽀払いをした時にどう感じたか。
ロケーション&設え:「google map」で迷わずたどり着けるか。内観のセンス、器や酒器、トイレの清潔感など店内の印象。
サービス:スタッフの接客の満⾜度
のどの渇き度:完璧に個⼈的主観だが、塩分過多などでのどが乾くような味が苦⼿。評価は星が多いほど、のどは渇かないということ。

【評価】
おひとりさま度 ★★★
⼝福度=価格の満⾜度 ★★★
ロケーション&設え ★★
サービス ★★★
のどの渇き度 ★★★★

過去記事はこちらから

過去記事はこちらから

⾼橋綾⼦
(たかはしあやこ)

フードパブリシスト。国内外ファッションブランドのプレスとして従事した中で肥えた“食”へのこだわりは、その後の素晴らしい人々との出会いと相まっていつしか人⽣そのものに。
その間に培った食のデータと人脈を武器に、年間 1000 軒ほどの外食で“喜ばれるレストラン”の発掘に勤しむ⽇々。「綾⼦のギョーカイ総受けグルメ手帖」「BRUTUS」「GQ」「食べログマガジン」「集英社オンライン」などに寄稿。BS フジ「リモート☆シェフ」では審査員として定期的に出演。
東京都主催の食の祭典、「Tokyo Tokyo Delicious Museum 2023」のプロデューサーに就任。また企業のメニュー開発やアドアイザーにも携わる。おいしいものしか喉を通らない不思議体質。