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とんかつ3名士 河田部長の とんかつひとり旅⑭とんかつ康四郎(大阪・南船場)

牛肉文化と言われる大阪で、豚肉で勝負する「たゆたゆ」グループを率いる川端友ニさんは、とんかつが大好きだそうで、2023年2月に「とんかつ康四郎」を立ち上げました。実は川端さんとは、東京のあるとんかつ店でお目にかかっていたようです。

場所は南船場、心斎橋駅からもほど近いです。2階への階段を上がると、L字型のカウンターがあり、川端さんの作業がよく見えるようになっています。3銘柄食べ比べのコースがあり、豚肉がグレードアップされるプレミアムコースに〆のご飯がプラスされるものを選びました。〆のご飯は紅いミンチカツ丼とバラかつ茶漬けの2択で、バラかつ茶漬けにしました。

最初に提供されるキャベツのざっくりした食感が心地よく、2回おかわりしてしまいました。この店のとんかつの調理は油の温度を変えての二段階揚げプラス余熱で火を通すという工程となっていますが、最後の余熱の過程が興味深いです。通常はバットの上に常温で放置する店が多いと思われますが、調理器具の中で保温した状態で余熱を入れていきます。また下にはパン粉が敷き詰められています。これで衣がベタつくこともないわけです。

ヒレは薩摩茶美豚がカットを変えて2切れ、ロースは静岡、富士農場の中ヨークシャー純粋種、静岡、金子畜産の天城黒豚がそれぞれ提供されます。豚肉調理を知り尽くしていると思われる川端さんの技術は冴え渡っており、肉は柔らかく旨みが十分です。衣は薄く肉にぴたりと貼り付いています。注目すべきはヒレとロースでパン粉を使い分けていることです。ヒレは糖度2%で白っぽく、ロースは糖度4%でややきつね色に仕上がっています(糖度が低いと衣の色が白くなります)。肉に合わせて5種類のパン粉を使い分けているそうです。

〆のバラかつ茶漬けはご飯にトマト、バラかつ、山わさびをのせ、玉露を注ぎます。トマトと玉露でグルタミン酸たっぷりですが、さらりと食べられます。ご飯は滋賀のミルキークイーン(Katsuプリポーと同じ)で大変美味しいです。お新香、赤だしにも手抜かりはありません。 現時点でも大阪でトップを争う店だと思います。近いうちに全国からとんかつ好きが訪れる店になることでしょう。

お勧めポイント
とんかつの技術の可能性を徹底的に追求している
数種類の銘柄豚を食べ比べ出来る

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河田 剛

大手証券会社の調査業務に携わる傍らでグルメアナリストとしても活躍。さまざまな料理を食べ歩き、著書『ラーメンの経済学』(KADOKAWA)で話題に。料理の背景や素材、流通に至るまで、幅広い視点での鋭い洞察が特徴。