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とんかつ3名士 河田部長の とんかつひとり旅⑫とんかつ青柳(甲府)

甲府駅からさほど遠くないのですが、歩くと30分近くかかるのでバスに10分ほど乗り、八幡神社入口のバス停で下車後3分ほど歩きます。とても飲食店があるとは思えない住宅街の細い道の先にある一軒家がとんかつ青柳です。

昼夜1組ずつの完全予約制になっています。年配のご夫婦が趣味でやっているような店で、内装やトイレもユニークです。昭和レトロなアイテムが多数飾ってあります。

メニューはコース(5800円)のみとなっています。やかんでお茶が提供されるので飲みながら料理を待ちます。まずは有機野菜のサラダが出てきます。野菜がぎっしり詰まっており、ボリュームたっぷりです。この野菜と自家製ドレッシングの質が極めて高いのです。トマトが甘く、その風味が口いっぱいに広がります。

次に黒ニンニクを添えたせんべいかつ、一口大のかつにグリーカレーを合わせた一口カツカレーが提供されます。どちらも手のかかった料理です。そして主役のロースかつ(ヒレとの事前選択制)が出てきます。閉店してしまった神田の万平を彷彿とさせる薄い衣で、適度に脂身を落とした肉は旨味が十分に引き出されています。塩とレモン、辛子とソース、タバスコとソースで食べますが、タバスコが意外に合うのが新しい発見でした。途中、かつにおろしと脂身をのせて、レタスで巻いて食べますが、これも面白い感覚です。キャベツは塩昆布の千切りを混ぜ、レモンを絞って食べます。これも京都の割烹の名店、千花のお造りを連想させます。

最後のゴルゴンゾーラのアイスに至るまで、独自の工夫が凝らされています。他には無いユニークな店で、この店のために甲府まで食べに行っても決して損はないでしょう。

お勧めポイント
●ボリュームたっぷりの上質なサラダ
●薄い衣のかつとかつを利用したバリエーション

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河田 剛

大手証券会社の調査業務に携わる傍らでグルメアナリストとしても活躍。さまざまな料理を食べ歩き、著書『ラーメンの経済学』(KADOKAWA)で話題に。料理の背景や素材、流通に至るまで、幅広い視点での鋭い洞察が特徴。