和食STYLE

⾼橋綾⼦のNO SUSHI, NO LIFE – 第二六回 すし玲

第二六回 すし玲

高級鮨で明朗会計の立役者

表参道駅から徒歩5分、「 鮨 ます田」 の居抜きで入ったのが「すし玲」です。内装はほぼ変わっていません。高級鮨だったのでせっかくの設えを壊すのもねぇって感じなのかな。でも内容はぜんぜん違って、こちらはドリンク、税、サービス込みの安心価格です。 聞いた時は画期的で素晴らしい!と思いました。だって回転しないお鮨屋さんってお会計渡されてびっくりしちゃうことありますよね。こちらは11,000円と16,500円2つのコース があり、違いは出てくる鮨ダネと日本酒。これならデートでも見栄張れるってもんです。

この日ははじめにつまみが 8品でました 。握りが始まったかと思ったら茶碗蒸しが登場。そのあと 握りが数貫出て土瓶蒸し。 また握り数貫の間にミニ丼 が挟まれ、玉。穴子は塩と煮ツメが半々、そしていなり寿司で最後にお椀という構成。「鰹」は玉葱と長葱と大根おろしで作った自家製タレをのせていたり(いろいろ使えそうなこのタレがかなり美味なんですよ)、いくらをのせた茶碗蒸しの中から白子が出てきたり、というようにつまみはちょっとした和食店並みに凝っているし、お造りも上質な食材というのがよくわかる。

握りもつまみ同様、剥がし鮪には漬物が潜んでいたり、鮪の脳天みたいな珍しいタネがあったり、赤身漬けが車海老の後に出てきたりとなかなか趣向が凝らされた10貫 。酢飯は白酢で少しやわらかめに炊いています。酸味は控えめなのでタネを引き立たせる脇役的存在。私的にはOKですけど、印象がないといえば そうかも。でも食が細い人でも最後まで食べ疲れることなくおいしくいただけるっていうのは強みだと思います。

こちらはお鮨だけじゃなく、アートとの融合もテーマにしています。扱っている器やグラス、盛り板、店内の装飾品などは若手クリエーターたちによるもの。お鮨屋らしい凛とした空間もいいけど、こうやって若者を応援する場を作るって心意気、本当に素晴らしい。器だけを見ると「マジ?」と思うものも握りがのると意外に合うなって思ったし、日本酒のグラスにいたっては 飲み口の広さや形を変えることで味わいの違いを楽しませてくれたりするのも好感度アップ。この内容でこのプライスは努力の賜物だと思ったら 今はどうやら込み込みコース19,000円オンリー になってしまったようです。でも込み込み2万円切るんだから、ありがたく通いましょう。

綾⼦の⾃分勝⼿評価基準
おひとりさま度:ひとりではもちろんのこと、たとえ初めてでも楽しめるかどうか。また何か素敵なことが起こるか、客層はどうかも含む。
⼝福度=価格の満⾜度:鮨⾼騰の折、基準は⾷べて飲んで 4万円以下。おいしいは当然、⽀払いをした時にどう感じたか。
ロケーション&設え:「google map」で迷わずたどり着けるか。内観のセンス、器や酒器、トイレの清潔感など店内の印象。
サービス:スタッフの接客の満⾜度
のどの渇き度:完璧に個⼈的主観だが、塩分過多などでのどが乾くような味が苦⼿。評価は星が多いほど、のどは渇かないということ。

【評価】
おひとりさま度 ★★★★
⼝福度=価格の満⾜度 ★★★★
ロケーション&設え ★★★★
サービス ★★★★
のどの渇き度 ★★★★

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⾼橋綾⼦
(たかはしあやこ)

フードパブリシスト。国内外ファッションブランドのプレスとして従事した中で肥えた“食”へのこだわりは、その後の素晴らしい人々との出会いと相まっていつしか人⽣そのものに。
その間に培った食のデータと人脈を武器に、年間 1000 軒ほどの外食で“喜ばれるレストラン”の発掘に勤しむ⽇々。「綾⼦のギョーカイ総受けグルメ手帖」「BRUTUS」「GQ」「食べログマガジン」「集英社オンライン」などに寄稿。BS フジ「リモート☆シェフ」では審査員として定期的に出演。
東京都主催の食の祭典、「Tokyo Tokyo Delicious Museum 2023」のプロデューサーに就任。また企業のメニュー開発やアドアイザーにも携わる。おいしいものしか喉を通らない不思議体質。