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とんかつ3名士 河田部長の とんかつひとり旅⑩名代かつ屋万さく(鹿児島・姶良市)

鹿児島県内では評判の店です。鹿児島市ではなく、お隣の姶良市で営業しています。鹿児島中央駅から最寄りの帖佐駅まで約25分、さらに10分ほど歩くと店が見えてきます。ロードサイドのやや高めのレストランといった趣の建物です。昼過ぎに到着したところ、満席でしばらく待つことになりました。

この店では当然ながら鹿児島の黒豚を使用しています。サツマイモ麦を食べさせて育てた黒豚を熟成させています。メニューが豊富で目移りがしますが、人気メニューだという特上黒豚熟成ロースかつ膳を選んでみました。黒豚は脂身の甘さが身上なので、まずはロースを試したいところです。ランチは少し安価な設定になっており、このメニューも特上でありながら2000円程度です。運ばれてきたとんかつは、鹿児島市の「川久」(第8回)のワイルドな見た目と比べるとやや繊細なイメージです。器は有田焼を使っています。 とんかつは黒豚を中粗のパン粉でキツネ色に揚げています。もちろん脂身の甘さはしっかりと感じられ、旨みは熟成させた分濃厚です。卓上には岩塩、ごま塩とソースがありますが、塩の方がこの肉には合うと思います。

ご飯や自家製のお新香、キャベツも吟味されていて美味しいのですが、面白いのは味噌汁です。鹿児島の麦味噌を使い、地元の野菜などがたっぷりと入っています。鹿児島の料理は甘口の味付けが多いのですが、この味噌汁もやはり甘いです。ただ、黒豚のとんかつとの相性は良いです。鹿児島らしさを味わうとい う意味では、この味噌汁は大事な役割を果たしています。

鹿児島市内から少し足を延ばしてみるのも良いのではないでしょうか。電車の車窓からは雄大な桜島と海が間近に見えます。

お勧めポイント
●鹿児島黒豚を繊細に仕上げている
●鹿児島らしい甘い味噌汁

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河田 剛

大手証券会社の調査業務に携わる傍らでグルメアナリストとしても活躍。さまざまな料理を食べ歩き、著書『ラーメンの経済学』(KADOKAWA)で話題に。料理の背景や素材、流通に至るまで、幅広い視点での鋭い洞察が特徴。