和食STYLE

⾼橋綾⼦のNO SUSHI, NO LIFE – 第二四回 ヒカリモノ

第二四回 ヒカリモノ

六本木でこのクオリティで1万円以下なんて い〜んじゃありませんか

六本木ミッドタウンから徒歩5分くらいでしょうか。そもそも期間限定だったはずなのですがコロナ禍にもめげず、どうやら継続していくみたいです。ここは「食幹」 「小野木」 「eat麻布十番」などのオーナーシェフ佐藤 幹さんのお店です。これらのお店に行ったことがある人はわかると思いますが、“普通じゃない”んですよね。ひねりがあるんです。こちらも店名からして「おっ!」と思わせるものがあるじゃありませんか。ということでインスタのDMで予約してみました。

オープン当初から変わり、夜ノ部は「つまみと握り18品」と「握りのみ14貫」と「つまみのみ14品」の3コースがありますが、アラカルトもありで、しかも一斉スタートではないからこの立地なのに当日でもふらっと入れちゃうっていうところが素晴らしい。しかもコースはどれも9,900 円ですよ、何という太っ腹価格! ということで当然、「つまみと握りコース」をチョイス。最初に「ホヤ煮」、続いて鰹のお刺身、すると突如イカの天ぷらが出た! まぁ、でも2切れなんで酒の肴にはいいか。で、次は鯛の握りという感じでランダムにつまみと握りが出てきます。

酢飯は赤酢で結構強めの味わい。握りは大きめなので「シャリ小さくもできますよ」と声をかけてくれます。「ヒカリモノ」というから光物が多いかと思いきやそうでもありません。後半の握りは「鮃」 「車海老」 「鮪」 「金目鯛」といった王道ダネがテンポ良く出てきます。そうそう、ひと口丼の「イクラ」がプリッと弾けてちょっと甘みがあっておいしかったので訊いたら昆布だしで漬けているそう。こういう小技はさすが「食幹」だけありますね。

スペシャリテは鰯をべったら漬けと梅肉と紫蘇でと一緒に海苔巻きにして胡麻をふりかけた店名と同じ名前の「ヒカリモノ」。べったら漬けにはおいしい驚きがありました。でも総じてオーソドックスでひねりが効いたといえばこの「ヒカリモノ」と焼いた太刀魚とちょびっとの酢飯を海苔で手巻きにしたものくらい。佐藤さんのお店にしては“普通”だなぁと思ったらインスタによると酢飯用の酢をコンブチャで作ったらしく、これにはちょっと興味津々。正直、お鮨自体はそれほどではないけど、お財布に優しい金額なこと、時間が自由で予約なしでもOKなこと、アラカルトがあること、六本木エリアということで行きつけリストにON しておくといいかも。

綾⼦の⾃分勝⼿評価基準
おひとりさま度:ひとりではもちろんのこと、たとえ初めてでも楽しめるかどうか。また何か素敵なことが起こるか、客層はどうかも含む。
⼝福度=価格の満⾜度:鮨⾼騰の折、基準は⾷べて飲んで 4万円以下。おいしいは当然、⽀払いをした時にどう感じたか。
ロケーション&設え:「google map」で迷わずたどり着けるか。内観のセンス、器や酒器、トイレの清潔感など店内の印象。
サービス:スタッフの接客の満⾜度
のどの渇き度:完璧に個⼈的主観だが、塩分過多などでのどが乾くような味が苦⼿。評価は星が多いほど、のどは渇かないということ。

【評価】
おひとりさま度 ★★★★
⼝福度=価格の満⾜度 ★★★
ロケーション&設え ★★★
サービス ★★
のどの渇き度 ★

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⾼橋綾⼦
(たかはしあやこ)

フードパブリシスト。国内外ファッションブランドのプレスとして従事した中で肥えた“食”へのこだわりは、その後の素晴らしい人々との出会いと相まっていつしか人⽣そのものに。
その間に培った食のデータと人脈を武器に、年間 1000 軒ほどの外食で“喜ばれるレストラン”の発掘に勤しむ⽇々。「綾⼦のギョーカイ総受けグルメ手帖」「BRUTUS」「GQ」「食べログマガジン」「集英社オンライン」などに寄稿。BS フジ「リモート☆シェフ」では審査員として定期的に出演。
東京都主催の食の祭典、「Tokyo Tokyo Delicious Museum 2023」のプロデューサーに就任。また企業のメニュー開発やアドアイザーにも携わる。おいしいものしか喉を通らない不思議体質。