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とんかつ3名士 河田部長の とんかつひとり旅⑨とんかつ大希(東京・京急蒲田)

京急蒲田駅からデッキを通ってすぐ、2021年10月に開業したばかりの比較的新しい店ですが、とんかつ好きの注目を集めています。私はとんかつを注文する際には脂身のあるロースにすることが多いのですが、こちらはヒレにも力を入れているため、この日は特白ヒレかつ定食にしました。まず、サルシッチャなどのアミューズ的な皿が2品出てきます。スパークリングワインが随時ハッピーアワーの扱いで安いので、それを飲みながらとんかつを待ちます。

豚は基本的にSPFの岩中豚で、不定期に黒板メニューとして別の銘柄豚が入荷することがあるようです。また、業界では知名度が高い中屋パン粉工場からパン粉を仕入れています。パン粉はとんかつの個性を決める重要な要素です。おそらく低糖度のパン粉を低温でじっくり揚げることで、白いとんかつを実現しているものと思われます。断面はピンク色です。しっとりした柔らかいとんかつで、210グラムというボリュームでありながら、全くもたれません。塩、だし醤油と辛子、とんかつソース、だし汁など調味料のバリエーションが豊富で、いずれも楽しめます。

キャベツはこまめに刻んでいるようで美味しく、赤だしの味噌汁、お新香も良いですが、特に羽釜で頻繁に炊き上げるご飯が高品質です。ご飯にだし汁をかけて食べるのも良いと思います。ヒレよりはややカリッとしたロースかつや、珍しい赤身の盛り合わせ定食(シンタマ、モモなど)、吉祥寺の人気店「肉山」とコラボした辛口のカレー、アジフライなどもお勧めです。

もうひとつ特筆すべき点は、店主の三井光秀さんのテーブルウォッチです。実によくお客さんを見ており、すぐに要望に応えてくれます。それでいて最も高い特白ヒレかつ定食でも2023 年6月時点で2700円とお手頃なのも嬉しいポイントです。先行する人気店の良い点を取り入れた高コスパ店です。

お勧めポイント
●白い衣のかつのしっとり、柔らかい味
●店主の行き届いたサービス

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河田 剛

大手証券会社の調査業務に携わる傍らでグルメアナリストとしても活躍。さまざまな料理を食べ歩き、著書『ラーメンの経済学』(KADOKAWA)で話題に。料理の背景や素材、流通に至るまで、幅広い視点での鋭い洞察が特徴。