檀崎真由美のボルドー通信『フランス必食N E W S』⑤
今回のボルドー通信は前回のボルドーワインのプリムールに続きシャトー・ラグランジュ(CHÂTEAU LAGRANGE )のプライベートテイスティングと、ペアリングランチで提供されたワインについて。
(※プリムールについては前回のボルドー通信をご覧下さい)
シャトー・ラグランジュはボルドー市内から40km程離れたメドック地区サンジュリアンにある日本のサントリー所有のメドックグランクリュ格付け第3級シャトー。
「ラ・グランジュ」というのは「自立した小さな集落」の意味。
葡萄畑を車で走り抜けると前方に白鳥が優雅に泳ぐ庭園の池と、その先に聳え立つ優美なシャトーが見えてきて、まるで絵画の世界に飛び込んだ様な美しい景色が広がります。
この日はシャトー・ラグランジュのジェネラルマネージャーであるマティウ・ボルド氏が、受賞歴豊富なシンガポール在住のソムリエの方をラグランジュ2022ヴィンテージワインのプライベートテイスティングとランチにご招待の席に同行させて頂きました。
先ずはワイン造りに大切な葡萄畑を見学。赤ワイン用のカベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ、プティ・ヴェルドの葡萄の樹々が並んでいます。樹齢40年の樹もあるとの事。
118ヘクタールの面積の葡萄畑は、品種や畑毎の葡萄の完熟時期に応じて100以上に細分化され、環境や自然との調和を重視したワインづくりを目指しているとの事。この他に白ワイン用区画として11ヘクタールを所有。
昨年のボルドーは年間降水量が大幅に低く、夏の記録的猛暑という稀有な気象条件となり、強い日射による日焼けから葡萄を守る一方で、香り豊かでふくよかな葡萄を得る為に、果房周囲の葉の維持や除去等のタイミングを慎重に選んで作業する事が特に重要だったとの事。
続いて丁寧に美しく手入れされた庭園を巡り、ワインセラーへ。醗酵条件がコンピューター制御されているステンレスタンク、画像解析による光学選果機をボルドーでいち早く導入した醸造工程等の説明や、伝統的な樽熟庫を見学した後、テイスティングルームへ。
皆この時を待ってました!と嬉しそう。真剣な眼差しで香りを嗅ぎ、口に含んで頷いたり微笑んだりしながら『芳醇でバランスが取れていて美味しい!』等、様々な表現を口にします。其々の感性で表現方法が違うので興味深く学びが多いです。
その後、城内に用意された食卓に案内されて皆で着席。
プリムールやシンガポールのワイン事情等、和やかな雰囲気の中で談笑が続き、アミューズ・ブーシュ(突き出し)の巻き寿司からメインの鴨肉のロティまでラグランジュのワインに合わせてゆっくり味わいました。
続いて2002年の右岸と左岸の赤ワイン4本を皆でブラインドテイスティング。自分の好みの順位をつけマティウさんに報告。全員申告後に各ボトルの銘柄を発表していくと、何と私が1番に選んだのはシャトー・ラグランジュ!マティウさんより『嬉しいね!いつでも戻って来ていいよ!』と笑顔で言って頂きました。
実はラグランジュのワインは前副会長の椎名敬一氏に大変良くして頂き、収穫祭等のイベントに訪れる機会もあり、自然と惹かれるのだと思います。又、料理教室でもペアリングで提供していた事があります。椎名副会長にメニュー内容を伝え、この料理にはこのワインがお勧め!と贅沢にも選んで頂き、一時帰国中に行う料理教室用に日本に持参してました。
中華料理等にも相性の良いシャトーラグランジュのサードワインはル・オー・メドック・ラグランジュ(LE HAUT-MEDOC LAGRANGE )。エレガントで柔らかな口当たりでお値段もお手頃なのでお勧めです。
フランス人向けのお弁当クラスにはこちらでペアリング。皆さん大変喜んでいました。
以前【シャトーラグランジュ物語】という本を読み、深い感銘を受けました。シャトー・ラグランジュは1842年〜1875年迄フランス国王ルイ・フィリップのもと内務大臣を務めたデュシャテル伯爵が所有。1855年のパリ万博で制定されたメドック公式格付けで「グランクリュ第3級」を取得。その後所有者が代わり、世界大戦や蔓延した病害虫等により経済危機となり、畑は切り売りされシャトーは荒廃と化し、ワインの品質も低下し衰退。当時代々受け継がれる保守的なワイン産地に日本企業参入に於いては前例が無く、様々な障害や困難を不屈の精神で乗り越え、1983年にサントリー所有となる。葡萄畑の改植から行い、醸造設備も一新。城館や庭園の修復までも徹底的な大改革に取り組み、ワイン醸造における工夫や知恵を重ね長年の努力が実を結び、再び栄光を取り戻すまでの心に残る物語があります。
https://chateau-lagrange.com/ja/
フランスボルドー在住料理家。ダンラキュイジーヌ(Dans La Cuisine)主宰。
La société MT GESTION CULINAIRE共同代表(フランス)。
Alchemist.Pte.Ltdコーポレートシェフ(シンガポール)。
和洋中の料理を専門的に学び、著名な一流シェフのアシスタントを経験後、仏料理店『シェ松尾』で5年修行し独立。
クッキングスタジオでの料理教室開催、大手企業や海外一流ブランドのパーティーフードをシェフとして手掛け、人気を集める。アメリカ、シンガポール生活後、現在ボルドーを中心にフランス政府正規就労許可の元、料理教室、オンラインレッスンを開催。英語と仏語でも和食レッスンを行い、全国放送『F R A N C E3』にてお節料理を作り、自身の料理活動と共に紹介される。フランス料理だけでなく、和食、本格中華点心迄ワンランク上のクオリティーに仕上げるテクニックで国内外問わず活躍中。