和食STYLE

EATRAVELLER HIROEの女子美食旅 ⑦宮島・AKAI

広島県廿日市にあるレストランAKAI(アカイ)は、世界遺産「厳島神社」の最寄り駅である宮島口から坂を上って徒歩約10分。築80年の古民家を改装し、古き良きものを大切にした温かみのある空間です。柔らかな陽の光が差し込む居心地の良い店内はカウンター8席。ジャパンタイムズが主催するわざわざ訪れる価値のあるレストランセレクション、Destination Restaurants 2022に選ばれています。

シェフの赤井顕治氏は、2017年に35歳以下の料理人コンペティション「RED U-35」でグランプリを獲得しました。彼はあまり自らそのことを表に出さないようですが、私が伺った時お隣の常連様から「このシェフはRED U-35っていう大会で日本一になったんですよ!」と嬉しそうに話しかけられました。郷土の誇りとして地元の方から愛されているのがわかります。

赤井シェフはフランスで修行を積んだ後、2019年5月にAKAIをオープンします。彼の料理は「フレンチ」というジャンルに縛られず、お粥やお出汁、和の食材をふんだんに使用。食材本来の美味しさを最大限引き出すことにとことんこだわった究極にシンプルなノージャンル、あえて言えば「ジャンルはAKAI」とご自身の料理を独自のジャンルと位置付けています。

地元広島の生産者さんの食材を大事にし、好きな作家さんの器に盛りつけ、広島ならではの、ここでしか味わえない食体験ができます。そう、料理を通じて広島への愛がヒシヒシと伝わるのです。とはいえ、クオリティに納得した他県産のもの、例えば周防大島(山口県)の赤貝や富士酢プレミアム(京都府)なども効果的に使うこともあります。

名水で広島産の米を炊き上げたお粥で始まり、ソーセージと呼ばれるミートボールは豚、イノシシ、鹿、熊などその時々で変化します。広島江田島の牡蠣に江田島のオリーブオイルを合わせたり、肉、魚の火入れは抜群、〆はカレーやハヤシライス、季節の炊き込みご飯など、そして、濃密なのに程よいコクと甘味のプリン! 季節感だけでなく、温度や食感、余韻なども考え込まれたコース構成です。

余計なことを削ぎ落しながらコツコツと積み上げ、それを時に叩き壊す。そうやって新たに前進し続け更なる高みを目指しているのでしょう。格闘技好きな赤井シェフらしいストイックさですね。 「AKAI」は、美味しい食事とゆったりとした時間を通して広島の魅力や愛が伝わる、そんなレストランです。

評価基準
わざわざ度:わざわざ旅する価値があるか
食材への愛:生産者さんへのリスペクト、食材のポテンシャルをどこまで引き出せるか
地産地消度:地元で生産されたものをどれだけ消費しているか
唯一無二度:いわゆるオリジナリティ
リピしたい度:わざわざ行ってみて尚再び行ってみたいか

わざわざ度 ★★★★★

食材への愛 ★★★★★

地産地消度 ★★★★★

唯一無二度 ★★★★★

リピしたい度 ★★★★★

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大野ひろえ

美食を求め旅するEATRAVELLER. その土地ならではの食材を使ったディスティネーションレストランからB級グルメまで幅広く巡ります。趣味は変態料理人探し。