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とんかつ3名士 河田部長の とんかつひとり旅 ⑥水塩土菜(静岡市)

静岡市の名店です。元々は「かつ好」の名前で1969年に創業しました。かつては恵比寿ガーデンプレイスにも進出していました。地方のとんかつ店の東京進出は珍しく、かつ洗練された雰囲気で注目を集めました。その後、2009年にスタッフが店を引き継ぎ、「水塩土菜」と店名を変更して再スタートしました。2016年には人形町「かつ好」として東京に再進出を果たしました。

「水塩土菜」は、静岡駅から徒歩15分ほどの場所にあります。入口はモダンですが、中は黒光りした木材を使用した天井の高い空間です。創業者が譲り受けた酒樽が随所に使われているようです。冷蔵庫の扉が木製なのは鮨屋のようです。厨房やホールでは大勢のスタッフが働いています。

中央の丸い大テーブルに席を取ります。メニューは豊富で目移りがします。かつ定食、特吟定食、特吟別格と並んでいますが、特吟定食の「しん」を選んでみました。ロースの脂身を切り落とした中心部分を揚げるもので比較的珍しいメニューです。ちなみに、特吟別格にはヒレの棒揚げがあります。このメニューの元祖的な存在かもしれません。最初にお新香と調味料が運ばれて来ます。ソースが大きめの平皿に入っているのは、とんかつをソースにつけやすくする細やかな配慮を感じます。

とんかつは粗めのさっくりした衣をきつね色に揚げています。肉はしっとりして赤身の旨さがしっかり出ています。こちらの揚げ油はラードではなく、天ぷらなどに使われる胡麻油が中心です。ラードのような香りはありませんが、その分さっぱりした味になります。味噌汁はアサリの赤だしで、貝の出汁がよく出ています。静岡市を訪問した際には、ぜひ選択肢に入れてほしい店です。

お勧めポイント
①旨味十分軽いとんかつ
②風情ある店内と丁寧な接客

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河田 剛

大手証券会社の調査業務に携わる傍らでグルメアナリストとしても活躍。さまざまな料理を食べ歩き、著書『ラーメンの経済学』(KADOKAWA)で話題に。料理の背景や素材、流通に至るまで、幅広い視点での鋭い洞察が特徴。