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とんかつ3名士 河田部長の とんかつひとり旅 ⑤とんかつ ばんぶー(千葉・本八幡)

2020年10月、総武線本八幡駅から歩いて5分ほどの住宅街にできた店です。フレンチ出身のシェフが一人で営業しています。ビストロかカフェを思わせる瀟洒な外観の店です。メニューでは特選リブロースかつ、特選ヒレかつも魅力的でしたが、メニューの最初に書かれている厚切りロースかつにしてみました。見るとシェフは精密機械のように調理の動作を繰り返しています。この時点で美味しいとんかつへの期待が高まります。

まずはソース、塩などの調味料のセットがカウンター上に置かれますが、その位置はきっちりと決まっているようです。運ばれてきたとんかつの断面は実に美しいピンク色です。この店では特に豚の銘柄の表示は無いのですが、質の高い豚で、しっとりとして柔らかく、味に奥行きがあります。衣は細かいパン粉をかカリッときつね色に揚げており、フランス料理の技法「パネ」を思わせます。

また、特筆すべきは付け合わせや調味料の質の高さです。堆く盛り付けられたキャベツは、巧妙な刻み方で、キャベツそのものの風味を引き出しています。調味料セットの中にある玉ねぎのドレッシングが秀逸で、これをかけるとキャベツが無限に食べられそうです。ソースもフレンチを思わせる深みのあるものです。卵入りでねっとりしたポテトサラダもここならではと言えるでしょう。根菜と細かく刻まれた豚肉、ざっくり切られたネギが入った味噌汁も大変美味しく、思わず唸らされます。

ワンオペのため、オーダーの手順など細かいルールが色々とあったり、混雑時は長時間待たなくてはならないなどの制約がある店ですが、それを踏まえた上でも大いに行く価値がある店です。

ワンオペのため、オーダーの手順など細かいルールが色々とあったり、混雑時は長時間待たなくてはならないなどの制約がある店ですが、それを踏まえた上でも大いに行く価値がある店です。

お勧めポイント
①フレンチ出身店主の緻密なとんかつ
②高水準の付け合わせ、調味料

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河田 剛

大手証券会社の調査業務に携わる傍らでグルメアナリストとしても活躍。さまざまな料理を食べ歩き、著書『ラーメンの経済学』(KADOKAWA)で話題に。料理の背景や素材、流通に至るまで、幅広い視点での鋭い洞察が特徴。