- 人魚の浜は、若狭湾に沈む
美しい夕日が見られる絶景スポット。
大海原に映し出される海の道は必見です。
今回の郷土料理を探す旅の舞台は、福井県小浜市。
豊富な魚介類の宝庫である若狭湾に面し、天皇家に食材を献上する御食国として都の食文化を支え、京へ海産物を運ぶ「鯖街道」の起点となった美食の町で、名物の浜焼き鯖を使った料理を習いました。
- 脂ののった鯖を丸ごと豪快に焼き上げる小浜の名物。大野市では半夏生(はげっしょ)鯖といって、夏至から11日目に食べる習慣がある。
ヘンリーネック・レース使いシャツ¥21,000パンツ¥26,000(ともにキャラ・オ・クルス)ピアス(私物)
若狭湾沖は寒流と暖流が流れ込む好漁場で、若狭は古代より豊富な食材を都へと献上してきた後食国でした。江戸時代後期には、大量に水揚げされた鯖を“背負い”と呼ばれる行商人が京へと運んでいたことから、若狭と京を結ぶ道は“鯖街道”と呼ばれるようになりました。傷みやすい鯖にひと塩して、18里(約8km)離れた京都まで一昼夜かけて運ぶ間にいい塩梅に塩が回り、若狭ものは京都でも大評判になったのだそう。今でも祇園祭などハレの日には鯖寿司を食べる習慣が根付いています。
近年、若狭の鯖の水揚げ量は激減していますが、地元には鯖文化がしっかり伝承され、小浜の「浜焼き鯖」は全国的に有名。
鯖街道の起点、泉町商店街で250年続く「朽木屋」は浜焼き鯖の元祖。“鯖の生き腐れ”といわれるほど傷みやすい鯖を保存するために考案されたのが始まりで、背開きにした鯖の裏目から太長い1本串を波打ちし、丸ごと素焼きにするのが小浜流。
焼きたてを生姜醬油で味わうのが一般的で、わさびをのせてお茶漬けにするのもおすすめだそう。地元ではいろいろな食べ方があり、「残ったら、身をほぐしてちらし寿司にしたり、キュウリと和えて酢の物にしたり、焼き豆腐と一緒に甘辛く炊いても美味しいよ」と教えてくれたのは、朽木屋の12代目ご主人。最近では、空弁からブームに火が付いた“焼き鯖寿司”も人気を呼んでいます。
- (左)朽木屋の店頭には焼きたての鯖がズラリ。片面15分ずつじっくり焼くうちにジュージューと脂が落ちて香ばしい匂いが広がります。(中)自家製の鯖のへしこも名物。
朽木屋
全国から取り寄せの注文が入る浜焼き鯖とへしこの専門店
江戸時代創業の老舗で、「朽木屋」の名は鯖街道の朽木を経由して京へ魚を運んでいたことに由来するそう。看板商品の浜焼き鯖は、身が引き締まり、脂がのった寒鯖のみを年間を通して使用。サイズは小(400g前後)¥1,200、中(500g前後)¥1,400、大(700g前後)¥1,500。賞味期限は常温で3〜4日、冷蔵で約1週間。鯖のへしこは¥2,000。地方配送も可能。
小浜市小浜広峰39泉町商店街 ☎0770-52-0187
営業:8:30〜17:30 無休
おばま食文化館のキッチンスタジオで、子供たちにも料理を教えている
グループマーメイドの方々にご協力いただき、4品の焼き鯖料理を習いました。
食を中心としたさまざまな取り組みを行っている小浜市。その拠点となる「御食国若狭おばま食文化館」で調理体験の企画・運営などを行っている「グループマーメイド」の方々に、浜焼き鯖の簡単で美味しい食べ方を教わりました。
前田焼き鯖寿司が家で作れたら、おもてなし料理になるし、自慢できそう。教わるのが楽しみです
――鯖寿司と言えば〆鯖が主流で、焼き鯖寿司が食べられるようになったのは小浜でも最近のことですが、押し寿司の型さえあれば簡単に作れますよ。
地域によって、さまざまな料理があるので、今日は宮川地区の新保に伝わる「なまぐさ汁」などもご紹介します。
前田浜焼き鯖を1本買っても食べきれるか心配でしたが、本当にいろいろな食べ方ができるんですね。ヒントをいただいて、家でも自分なりにアレンジしてみたいと思います
作り方
- 生鯖は三枚に下ろし、魚焼きオーブンで焼く(市販の焼き鯖を使用してもよい)。
- 押し寿司の型に酢水をたっぷりつけ、すし飯を平たく入れて軽く押さえてからその上に焼き鯖を置き、蓋をして押さえる。
- 型からはずし、少しなじませてから8等分にする。
- 千切りにした土生姜を飾る。
作り方
- 米を研ぎ、調味料分(大さじ6)を控えて水加減をし、酒、薄口醬油を加え、軽く混ぜて20分ほど置く。
- 土生姜は皮付きのまま千切りに、乾ワカメは電子レンジに1〜2分かけてパリッとさせ、手で細かく砕いておく。
- 米の上に浜焼き鯖と土生姜をのせて炊く。
- 炊きあがったら鯖を取り出し、頭や骨、皮をていねいに取り除き、身を細かくほぐす
(ご飯を味見して、味が薄い場合は焼き鯖のほぐし身に薄口醬油を少々絡める)。 - ほぐした身を釜に戻し、ご飯と混ぜ合わせ、茶碗に盛り、胡麻とワカメをふりかける。
作り方
- 鍋に水と鯖の頭、出し昆布を入れておく。
- 浜焼き鯖は骨と皮を取り除き、身を大きめにほぐしておく。麩は水で戻しておく。
- 豆腐はさいの目に、ちくわは半月切り、かまぼこと椎茸は薄切りにする。しめじはほぐし、ねぎは3〜4cmくらいに切る。
- 1を火にかけ、沸騰直前に鯖の頭と昆布を取り出し、椎茸、しめじを入れる。
そのあと、ちくわ、かまぼこ、豆腐を加え、火が通ってきたら焼き鯖と麩も加えて調味料で味付けし、ねぎを加えてひと煮立ちさせる。
御食国若狭 おばま食文化館
鯖街道から御食国の歴史まで若狭の食文化を伝える総合施設
食育や地産地消の推進など、食のまちづくりに取り組む小浜市の拠点施設として平成15年にオープン。若狭の食に関する歴史や文化を展示したミュージアムをはじめ、若狭塗、若狭和紙の伝統工芸体験や展示販売などを行っている。子供の料理教室や郷土料理体験ができるキッチンスタジオも併設。
小浜市川崎3-4 ☎0770-53-1000
営業:9:00〜18:00(12〜2月は〜17:00)休日:水曜(祝日の場合は開館)
若狭湾で獲れる魚は「若狭もの」と呼ばれ、京都の料亭でも高級魚として珍重されてきました。鯖と並ぶ代表的な食材には、若狭ぐじ(アカ甘鯛)や若狭かれい(ヤナギムシカレイ)などがあり、ひと塩して寒風の中で天日干しにしたかれいは、現在でも皇室に献上されています。高級食材として名高い若狭ものですが、地元では居酒屋などでも味わうことが可能。鯖を塩と糠に1年以上漬け込み熟成発酵させた郷土料理の「へしこ」も味わい深い逸品です。
ブラウス¥17,000 パンツ¥26,000 ネックレス¥10,000(すべてキャラ・オ・クルス)
小浜で水揚げされた新鮮な海の幸が主役。❶この日のおすすめは、手前からメバル、若狭ぐじ、アジ、ノドグロ。❷6.8kgもある真子をまとった若狭ふぐ。❸熟成発酵された鯖のへしこはお酒のつまみにぴったり。さっと炙っても美味しい。へしこスライス¥700 ❹上品な味付けでふっくら炊いたノドグロの煮付け。高級魚もお手ごろ値段で味わえるのは、地元ならでは。脂がのって、濃厚な旨みが楽しめる逸品。¥1,600。塩焼きは¥1,500 ❺京料理には欠かせないブランド食材の若狭ぐじはこれからが旬。ひと塩してうろこをつけたままパリッと焼き上げる「若狭焼き」が王道。身が甘くて優雅な味わい。¥1,200 ❻一夜干しの若狭かれいは皇室献上品。淡泊で上品な甘さが特徴。若狭かれい塩焼¥1,200
四季食彩 浜照
獲れたての地魚をメインに若狭の旬の味覚を堪能できる和食処
小浜で獲れた地魚を中心に、四季折々の美味しい魚料理が楽しめる「小浜市地産地消をすすめる店」認定店。ブランド品の若狭ぐじをはじめ、一夜干しにした極上の若狭かれい、冬は若狭ふぐや越前がになどの高級食材が気軽に味わえるのが魅力です。若狭牛のローストビーフなど、その日のおすすめも充実。
小浜市駅前町3-9 ☎0770-52-0029
営業:18:00〜23:00(22:30L.O.)休日:日曜
撮影/谷口 京 モデル/前田ゆか スタイリスト/鈴木仁美 ヘア・メーク/高梨 舞 取材・構成/秋山美英
STORY 2015年7月号より