和食STYLE

文化遺産にふさわしい店「この一品」 新・和食めぐり㉓牛幸本店のすき焼き

美味しいものは食べたいけれど、高級店はまだまだ敷居が高くて苦手……そんな方にぜひお薦めしたいのが『牛幸本店』である。一流店らしい味わいとサービスを比較的リーズナブルに明瞭会計で堪能できるのが嬉しい。
名物料理もいろいろとあるが、まずはオーソドックスな「すき焼き」で、しっかりと一流の仕事ぶりを実感してほしい。味はもちろん間違いのないので、楽しい時間が過ごせるはずだ。

落ち着いた設えと抜群のサービスで
高級店の登竜門としてもお薦め

牛幸本店
東京都中央区新川1-9-8
03-3551-8980
https://www.ushikou-honten.com/

すき焼きは家でも気軽に食べられる料理だが、一流店に行くと、家で作るとまったく別の料理のように感じてしまう。肉だけではなく野菜や卵にまでこだわり、火の通し具合にも目を光らせて生み出される店ならではの味わいを、家庭で再現しようすることはやはり無理なことなのだろう。
私がよく通っている『牛幸本店』は黒毛和牛だけを使用している店で、しゃぶQや陶板土火焼(どかやき)、ビフテキ櫓焼(やぐらやき)と他ではお目にかかれない美味しそうなメニューもたくさんある。私はいつも悩みながらも誘惑に負けず「すき焼き」をいただく。
その理由は、「すき焼き」には欠かせない割下が甘すぎず辛すぎず自分の味覚と最高にマッチしていて、和牛の美味しさを何倍にも引き立ててくれるからである。供される黒毛和牛は間違いのない高級品で、「すき焼き」には欠かせない野菜との相性も抜群だ。

古民家風の店は調度品も品よくまとめられていて、大人のデートや女子会の場として利用している人も多く、ビジネス利用の会食にもマッチする上質な空間が特徴的。
実際に、私自身もフランクにお付き合いをしていきたいお客様と最初に利用する店のひとつである。大通りから一本入った場所にあり、お店全体が隠れ家のような雰囲気をまとっているところも私のお気に入りポイントのひとつだ。若い読者の方の中には、まだ高級店の雰囲気に慣れてないという人もいるかもしれない。
そんな人にこそ『牛幸本店』はうってつけの店で、比較的リーズナブルな価格で一流店の味わいとサービスを楽しめる。まずは高級店への登竜門として一度訪ねてみてほしい。もちろん「すき焼き」はすべて、目の前で調理をしてもらえるので、間近にそれを見るだけでもプロの仕事を感じられるだろう。

出されたものでお腹いっぱいにならなければ、最後のひと押しにお代わりの美味しい肉がある。赤身と霜降りのバランスが取れたももの希少部位で、比較的リーズナブルな“いちぼ”をお薦めしたい。存分に黒毛和牛を堪能したら、締めにはきしめんが付いてくる。
そこまで待てないという「肉のお供にご飯は欠かせない派」のあなたも大丈夫。別料金でご飯をオーダーすることも可能である。

プロフィール
川原 秀仁(かわはらひでひと)

街のにぎわいを創生し、建築に様々な役割を与える「施設参謀」として日本全国を飛び回る。事業と建築、和食という一見異なるジャンルの中で、伝統に基づいた本物の技術に着目。無形文化遺産として登録された和食の普及にも公私にわたり努めている。株式会社山下 PMC 代表取締役社長。

https://www.ypmc.co.jp/