和食STYLE

食の国日本〝食〟プロデューサー 松田龍太郎ブログ

Foodnia Japan 食の国 日本 連載 第21回

われ、饅頭に未来を思う。神楽坂「マンヂウカフェ」にて。

日本三大饅頭のご縁から、岡山県にあります大手饅頭伊部屋「大手まんぢゅう」の大岸さんと、饅頭談義をしばしばさせていただいております。

実は、大手まんぢゅうさんも、今年の1月で180周年を迎えました。「おまんじゅう」という日本ならではの和菓子、もっというと、大陸、中国から「万頭」という形で伝わったものが、小豆を使ったお菓子に変化したのは日本でかれこれ600年前に生まれたとも言われています。(これは日本三大饅頭の「志ほせ饅頭」さんがその祖とも言われています)

そんなお饅頭も、100年、200年と受け継がれてきている一方で、この先100年、200年と受け継がれるかというのは、正直私たちもわかりません。

和菓子という日本独自のスイーツをどうやって次世代に繋いでいくか。そんなことを僕たち食に関わる人間、さらにお饅頭を扱っている企業さんにとっては重要な課題です。

そうした中、大岸さんと、「このカフェに行ってみませんか?」と足を運んだのが、弊社の地元神楽坂にある「ムギマル2 マンヂウカフェ」です。

建物は古く、2階にあがると、ところどころ隙間風が吹き、ちょうど伺った日は、雪が降るのでは?というくらい寒い日でしたが、若い女性で満席。風情というよりは、「面白がってきている」という印象です。

そこで出されるのは、ここの名物「マンヂウ」です。オーダーが入ってから作られる手作り饅頭は、一階のキッチンで、蒸されて作られます。僕らがオーダーしたのは、「よもぎ地にウグイスあん」「白地につぶあん」など。ほかほか出来立て、湯気が出ている饅頭が出てくるまで10分。コーヒーをいただきながら、不思議な食体験でした。

飲食店を出店する際に、「企画」は非常に大事です。

企画は立地条件をときにこえ、山奥や、路地裏など一見目につかないところに人を呼び寄せる力があります。企画は「流行」になりやすい一方で、「持続性」という部分では、それ相応のパワーが必要です。つまり「人」です。誰が作っていて、どんなものが提供されるか。

このマンヂウカフェは「企画モノ」と簡単に片付けるのは難しく、マンヂウを作る、初老の女性がまたいい雰囲気で、あたかもものすごく昔からあるような風情があります。また土地柄、コーヒーチェーンではなく、こだわりの喫茶店に行きたい、というお客さんも多いです。内装などもよく見ると、なかなかこだわりがあるなかで、とても自然な風合いになっています。

そこで食べる饅頭は、明らかに、これまでの和菓子体験とは異なります。これが正解ということはないのですが、20**年にフィットする饅頭の提供のあり方として「アリ」なのではと思います。これから和菓子や、アンコ、そしてまんじゅうと、視点の切り方、提案の仕方で随分変わるのだと思います。

逆にいまその流れに沿って、伝統を継続されている和菓子屋さんは、そうした努力や「変化」をしてこられているのではないでしょうか。饅頭で「流行」を作るのは、今の流行りにくっつけば簡単かもしれません。とはいえ、それが100年、200年と継続させるのは、同じところにとどまることはできない。どちらかというと「変化」を自らしていく強さが必要になるではないでしょうか。

以前、ラーメンチェーンの「一風堂」の会長である河原成美さんがおっしゃっていた言葉を思い出しました。「変わらないために、変わり続ける」。一商品、一企業が変わらずにこの時代に残っていくためには、変わり続けないといけない。そんなことを、大手饅頭大岸さんとお饅頭を食べながらふと思うのである。

マンヂウカフェ ムギマル2 http://www.mugimaru2.com/

大手まんぢゅう:http://www.ohtemanjyu.co.jp/

松田龍太郎

松田龍太郎

2010年より株式会社oiseau(オアゾ)を設立。主に食にまつわる事業開発・店舗開発では、これまで50店舗以上を手掛け、一方企画・プロデュースの分野では、元テレビ局カメラマンとして、食に限らずメディア、PRコンテンツの発信、企画展開を得意としている。2020年4月より「奈良蔦屋書店」2階に「ブラッスリーアンド カフェ ウグイス」として新たなポップアップレストランを、そして同じく同月、青森県弘前市に開館予定「弘前れんが倉庫美術館」に付帯するカフェ「CAFE & RESTAURANT BRICK」を、それぞれ立ち上げ、運営・事業を作り上げている。
http://www.oiseau.co.jp