家族や仲間と一緒に鍋を囲んで楽しむ、ハレの食事にふさわしい「すき焼き」。
華があっても気取りはなくて、お酒でもご飯でもイケる味。
明治創業の老舗から、今どきの名店まで、ギュギュッと詰め合わせました。
- A5の黒毛和牛1人前約180g
- ブランドは指定せず、肉専門の板前がすき焼きに合う肉を厳選
- 関東風の辛めの割り下で煮る
ECHIKATSU
江知勝の国産黒毛和牛すき焼
伝統の割り下で具材を煮込む
牛鍋スタイルのすき焼きは
時代を超えて愛される逸品
文明開化の明治初期に開業した「江知勝」。その建物は戦災で焼失するも、1952年に再建され、現在に至ります。格子戸を開けて門をくぐると、そこは非日常の世界。しっとりと濡れた石畳から玄関へと向かうアプローチを辿り、通された個室は古き良き昭和の風情。6代目店主の海津さんを始め、番頭さん、仲居さんたちの気取りのないサービスも、この店の魅力です。「鍋は、かしこまって食べるものじゃないですから。個室なんだし、気兼ねなく楽しんでください」と、海津さん。一見さん、ウェルカムです。仲居さんが手際よく用意してくれる「すき焼」は、代々の女将に受け継がれてきた割り下で具材を煮込む、東京ならではの〝牛鍋〟スタイル。少し赤みが残る肉を箸で引き上げ、艶めく色合いに見とれつつ卵にくぐらせて、ハフハフッ。スッキリとした関東風の割り下が牛肉本来の旨みを際立て、幸せな時間が過ぎていきます。
- 《〆もどうぞ》食事は白いご飯または、あっさりとしただし漬け。海苔、アラレ、三つ葉に、山葵を落としてサラサラといただきます。
文京区湯島2-31-23/☎03-3811-5293
営業:17:00~21:00(L.O.)/休み:日曜、祝日
「国産黒毛和牛すき焼コース」税込¥7,560~(オーダーは2名~)
- A5の近江牛1人前200g
- 肉にザラメを振りかけ、割り下を少し注ぎ、焼き付けて食べる
- 京都から直送される野菜も美味
KYUTARO
久太郎のすき焼き
近江牛にザラメを振って
ジュジュッと焼き付ける
関西風すき焼き
葡萄の蔦が絡まる古い二階屋は、パッと見、古道具屋さんか何かのように見えますが、実は各界のVIPにもその名が知られる名店。店主の東谷久太郎さんは、京都伏見の旅館に生まれ育ち、ニューヨークでいくつかのレストランを成功させ、10年ほど前にこのお店をオープン。東京では珍しい、関西風のすき焼きを食べさせてくれます。使う肉は、A5ランクの近江牛で、1人前200gという気前の良さ。鉄鍋に牛脂を溶かし、肉を広げて入れ、ザラメをパラパラ。醤油を酒で割ったものをジュッとかけ、肉の色が変わったところでサッと裏返し、すかさず卵につけていただきます。煮込まないためか、上質な肉の柔らかさと旨みが前面に出てきて、後から香ばしさが追いかけてくるという、贅沢なお味。作り手のテクニックがモノを言うので、ちゃんとお店の方がフォローしてくれます。食事は基本的に、2階に3室ある個室で。1階はバーとしても利用可能です。
- 《〆もどうぞ》ご飯に鯛の刺身をのせ、ほうじ茶を注いでサラサラと。予約時に相談すれば、鯛の土鍋炊きご飯なども用意できるそう。
港区元麻布3-10-12/☎03-3408-1206
営業:18:00~翌2:00(昼も応相談)/休み:不定休
「すき焼きコース」税込¥6,000(単品は税込¥4,000)
室料1人¥1,000(2Fのみ)
- A5の米沢牛1人前約160g
- 適度なサシが入った甘い肉を塩焼き、塩煮の両方で味わう
- 5種類の岩塩をブレンド
GAZAN GARDEN
雅山ガーデンの
米沢牛特選塩すき焼き
米沢牛のために考案された
5種類の岩塩ブレンドと
カツオだしで煮るすき焼き
米沢牛料理専門店「雅山ガーデン」。大使館や高級住宅が立ち並ぶ閑静なエリアにあり、贅沢な空間使いで居心地は抜群。扱う牛肉は、山形県の最上川上流で育つ米沢牛の処女牛のみ。寒暖差のある気候で程よいサシが入り、飼料に加えるりんごで、より身が甘くなるのだとか。その身質の良さをストレートに味わえるのが、名物「塩すき焼き」です。
まずは、牛脂を溶かした鍋に、ねぎを加えてその香りをうつし、5種類の岩塩をブレンドしたものをパラパラ。その上に肉を広げて両面を焼き付け、米沢産の卵をからめてパクッ。焼けた肉の香ばしさと、口中にほとばしるクリアな肉汁の旨み、脂の甘みも丸ごと味わいます。2枚目以降の肉は、ブレンド塩で作る塩だれに、カツオだしを合わせたもので煮込み、余分な脂を落としながら、柔らかな肉を堪能。焼いたものとはまた違った繊細な甘みは、ウットリするほど。米沢牛、恐るべし。
- 《〆もどうぞ》肉や野菜をさらった後、酒を入れてアルコールを飛ばし、アクを取ったクリアなスープで作る雑炊。きしめんも選べる。
港区麻布台3-5-5 飯倉ヒルズ2F/☎03-5570-2929
営業:11:30~14:00、17:30~23:00(L.O.)、
土曜、祝日17:00~22:00(L.O.)/休み:日曜
「特選塩すき焼き」¥9,500 オーダーは2名~
- A5黒毛和牛のサーロイン
- 1人前120g。1枚目は関西風、2枚目は関東風すき焼きで
- 黄身が大きい八ヶ岳産の卵も◎
IMAFUKU
今福の極上牛サーロインすきやき
最高ランクのサーロインを
焼いて、煮て、ガブッと堪能。
厚めのカットが贅沢!
白金高輪の駅に近い角地に建つ、黒い一軒家。ここが〝肉のテーマパーク〟だと知る人は、なかなかの通です。母体は、最上級の黒毛和牛を専門に扱う、精肉卸のヤザワミート。メインは、しゃぶしゃぶと、すき焼きですが、専門店ならではのメニューをということで、しゃぶしゃぶでは、タン、フィレ、ランプと、豊富な部位をスタンバイ。すき焼きで使う肉は、極上のサーロインを程よく熟成させたもので、調理法は、関西風と関東風の一挙両得。肉好きなら、行かないわけにはいきません。
まず、1枚目は関西風。肉に濃いめの割り下を絡めて、ジュワジュワと焼き付け、くるくると巻いて、メレンゲ状の卵へダイブ。大口を開けてパクッとやると、まろやかな卵の奥からパンチのある肉の味がジュワ~ッと溢れ出します。2枚目以降は、だしで少しのばした割り下で煮込む関東風。クレソンやトマトなどの野菜をつまみつつ、極上肉を味わい尽くして。
- 《〆もどうぞ》白いご飯に、すき焼きの肉をつけて食べていた卵液をかけていただく、究極の卵かけご飯。おいしいに決まってる!
港区白金1-12-19/☎03-5420-2914
営業:17:00~23:00(L.O.)/休み:無休
「極上牛サーロインすきやき」のコースは、¥9,000~。
しゃぶしゃぶのほか、季節料理のアラカルトも多数。
撮影/田村浩章 取材/伊藤由起 構成/伊達敦子
美ST 2016年3月号より