とんかつ3名士 河田部長のとんかつひとり旅㊵ 熟成豚かわむら(京都・山科)
京都駅から一駅東にある山科は、桜と紅葉の名所毘沙門堂などで知られています。山科駅から徒歩10分弱の場所にある「熟成豚かわむら」は川村悠爾さんが2014年に始めた店です。以前は「とんかつ食堂熟豚」という店名だったようですが、2年ほど前に現在の店名に変わっています。のれんには豚の絵が描かれ、家族連れにも入りやすい雰囲気です。ただ、1時間に入店出来る人数を制限しているようなので、予約しておいた方がいいかもしれません。
店名にある通り、熟成豚が売りの一つになっています。京都伏見の精肉店京中(きょうなか)が3週間から5週間熟成させた豚肉とそれ以外の銘柄豚がメニューに載っています。熟成豚には鹿児島の三元豚を使った京中式長期熟成豚と宮崎県の南の島豚を使った京中式南の島豚の2種類があります。南の島豚の方は売り切れだったため、京中式長期熟成豚の特上ロースを注文しました。この店はテーブル席と壁に面したカウンター席が主体のため、厨房は見えないのですが、中屋パン粉工場製の糖度高めのパン粉を、まず低温のラード100%、次いで高温のラードとキャノーラ油(主にセイヨウアブラナから作られる植物油)を配合した揚げ油で二度揚げしているそうです。
カウンターに置いてある豚の佃煮がビールによく合います。出来上がったとんかつは低温揚げのせいか糖度の高いパン粉(焦茶色になりやすい)でありながら程よいきつね色に仕上がっています。何よりも特徴的なのは熟成香が漂ってくることです。噛むと凝縮された旨みが溢れ出します。ある程度熟成させた肉を使う店は他にありますが、ここまで長期熟成なのは珍しいです(長期熟成の店では同じく京都の空蝉亭もそうです)。調味料はマルドンシーソルト、甘口、辛口ソースがありますが、クセのある屋久島飛魚醤油と熟成肉の組み合わせが面白いです。
京都駅から電車で5分、ここだけの熟成肉の世界を経験できます。
お勧めポイント
● 熟成香と凝縮した旨みの豚
● テーブル席主体でグループでも使いやすい
大手証券会社の調査業務に携わる傍らでグルメアナリストとしても活躍。さまざまな料理を食べ歩き、著書『ラーメンの経済学』(KADOKAWA)で話題に。料理の背景や素材、流通に至るまで、幅広い視点での鋭い洞察が特徴。