和食STYLE

⾼橋綾⼦のNO SUSHI, NO LIFE – 第四八回 神楽坂 寿司こんこん

第四八回 神楽坂 寿司こんこん

握りになると俄然良くなる

飯田橋からちょっとキツい坂を上りきったところにある新しい建物で、これが銀座のクラブのような自動ドアでなんだかなぁと思いながらエレベーターで4階へ。扉を開けると金髪のお兄さんがお出迎え。コートを預かり席へご案内してくれる感じがマジ、クラブじゃん! おまけにハイチェアーは座りにくいんだよねと思いながらスタート。こちらはつまみの後に握りが続くスタイルです。はじめは「胃を温めてください」と鮪のテールスープと鮪のつみれ。気が利いてるなと思ったけどこれがしょっぱい。お腹が空いているから最初の味 ってすごく敏感なので、これだと逆効果なんだよね。

次は福島の天然トラフグ。身はぷりっぷりで弾力がありおいしかったな。すっかり気を良くしたところにお酒が進むあん肝が登場。これがまたしょっぱい。仕方ないのでちびちび食べながらお酒で薄めたけど、決しておいしいからじゃありませんから勘違いしないように。続いては沖縄のもずくとセイコガニの酢の物からすっぽんの茶碗蒸し、北海道真鱈の白子ポン酢へ。これは普通においしかった。

そして鯖の胡麻醤油和え、先ほどお造りで出たフグを使った土鍋仕立てでつまみは終了。この2品もしょっぱすぎた。特に鯖はタレをつけたら食べられないくらい。カウンターは二人体制で裏にも何人か料理する人がいるので誰が味を見ているのかわからないけど、これだけ味が濃いとは、みんなお疲れなのかしら。

ところが! 握りになったら俄然いいじゃありませんか。最初の白イカは軽く炙 ったおこげ感ももったり感もいい! 酢飯はちょっとやわらかいけど酢の塩梅もちょうど良くておいしい。鰹なんて中トロじゃないかと思うくらいとろっとろ。赤貝も磯の香りがふわりと漂い、めちゃくちゃおいしい。カワハギはうまみがなくておいしくなかったけど、ま、素材の問題なので仕方ないか。でもだったら出さなきゃいいのにとか、小丼のいくらはやっぱりしょっぱいとか、多少残念なことはあるけど本当につまみはなんだったのかと思うくらい握りはいい!

手渡しされる雲丹はとろとろで甘くておいしい。海苔巻きだからたっぷり食べられて大満足。最後の穴子は塩と煮詰めの半々で出してくれ、なぜここで出す!としょっぱい子持ち昆布がつまみで出たけど、玉はシフォンケーキみたいにフワッフワで赤だしもいいお味。ラ・フランスのコンポートがデザートで全体的にはいいんじゃないと思ってたところにお会計がなんと 30,998円! 麦焼酎ソーダ割りは 1 杯だし日本酒も3合しか飲んでないのに。リーズナブルって前情報があったのもいけなかったけどなんか騙された気分。これが 2 万円前半だったらなと坂を下ったのでした。

綾⼦の⾃分勝⼿評価基準
おひとりさま度:ひとりではもちろんのこと、たとえ初めてでも楽しめるかどうか。また何か素敵なことが起こるか、客層はどうかも含む。
⼝福度=価格の満⾜度:鮨⾼騰の折、基準は⾷べて飲んで 4万円以下。おいしいは当然、⽀払いをした時にどう感じたか。
ロケーション&設え:「google map」で迷わずたどり着けるか。内観のセンス、器や酒器、トイレの清潔感など店内の印象。
サービス:スタッフの接客の満⾜度
のどの渇き度:完璧に個⼈的主観だが、塩分過多などでのどが乾くような味が苦⼿。評価は星が多いほど、のどは渇かないということ。

【評価】
おひとりさま度 ★★★
⼝福度=価格の満⾜度 ★★
ロケーション&設え ★★★
サービス ★★★★
のどの渇き度 ★★★★

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⾼橋綾⼦
(たかはしあやこ)

フードパブリシスト。国内外ファッションブランドのプレスとして従事した中で肥えた“食”へのこだわりは、その後の素晴らしい人々との出会いと相まっていつしか人⽣そのものに。
その間に培った食のデータと人脈を武器に、年間 1000 軒ほどの外食で“喜ばれるレストラン”の発掘に勤しむ⽇々。「綾⼦のギョーカイ総受けグルメ手帖」「BRUTUS」「GQ」「食べログマガジン」「集英社オンライン」などに寄稿。BS フジ「リモート☆シェフ」では審査員として定期的に出演。
東京都主催の食の祭典、「Tokyo Tokyo Delicious Museum 2023」のプロデューサーに就任。また企業のメニュー開発やアドアイザーにも携わる。おいしいものしか喉を通らない不思議体質。