とんかつ3名士 河田部長の とんかつひとり旅㉔美はる@愛知・尾張旭
2023年の6月末に名古屋で評判の高かった「あさくら」がファンに惜しまれつつ閉店しましたが、名古屋周辺で並び称されてきたのが「美はる」です。以前は名古屋市内の名東区で営業していたようですが、現在は隣接する尾張旭市のロードサイドに移転しています。車が無いと行きにくい場所ですが、私は名古屋駅から地下鉄東山線の終点藤が丘駅まで行き、そこから名鉄バスの愛知医大方面行きに乗り換えて晴丘のバス停で下車しました。バス停からは徒歩 2〜3分で到着します。5 年ぶりの訪問でした。
この店は揚げたあとの蒸しの工程にかなり時間をかけるため、開店後に到着するとかなり待つことになります。このため開店1時間前に先頭を確保しました。店内は古民家を思わせる内装で、天井には太い梁があります。せっかくなのでロース・ひれ盛り合わせ定食を選択しました。ロースには新潟の和豚もち豚、ひれには宮崎のきなこ豚(飼料にきな粉を配合して育てる豚)という異なる種類の豚を用いています。どちらも濃厚さというよりはすっきりした持ち味です。提供にはやはり時間がかかり、一番手の私でも40分近く待ちました。油のシンクが2つあるので、温度を変えて二度揚げして、それから蒸らしているのかもしれません。
「うす衣」と看板にも謳われている通りで、非常に肌理の細かい衣が薄らと肉に貼り付いています。その舌触りは絹のようです。そして肉は柔らかく、穏やかな味わいです。この繊細な感覚は唯一無二だと思います。
とにかく軽いとんかつで油がほとんど残らず、胃にも全くもたれません。ジャンクなとんかつとは対極にあります。 アクセスは便利とは言えませんが、中京地区では決して外してはならない店だと思います。
お勧めポイント
●限りなく薄い衣
●全くもたれない繊細な味わい

大手証券会社の調査業務に携わる傍らでグルメアナリストとしても活躍。さまざまな料理を食べ歩き、著書『ラーメンの経済学』(KADOKAWA)で話題に。料理の背景や素材、流通に至るまで、幅広い視点での鋭い洞察が特徴。