とんかつ3名士 河田部長の とんかつひとり旅⑯マンジェ(大阪・八尾)
1996年創業で、大阪では10年以上前から評判の店です。大阪における近年のとんかつの流れの牽引車的な存在です。店主の坂本邦雄さんは、大阪のホテルのフレンチに長年勤務した後、大阪市の南、八尾市に店を構えました。八尾駅から商店街を5分ほど歩いた場所になります。私自身は11年ぶりの訪問になります。
当時は開店少し前に待っていれば食べられましたが、今は朝8時半からの記帳制となり、なかなか訪問できずにいました。8時半に行ったのでは間に合わないと聞いたので、7時前に到着しましたが、既に5、6人並んでいました。この店はカウンター12席のみ、なんとか1回転目に入りました。2回転目以降は逐次電話で呼び出しとなります。
店の様子は以前とさほど変わっていないようです。ただ、以前はとんかつ弁当の注文が多く、それをどんどん揚げていましたが、来店客の分のみを揚げるようになっていました。
11年前にも当時希少だったTOKYO Xを用意するなど、豚肉は吟味しており、今回もTOKYO Xのほか、氷室豚、愛農ナチュラルポーク、ゴールデンボアポークなどがメニューに載っていました。
極ハーフ&ハーフというセットメニューは特上ヘレとんかつと、好みで選べる銘柄豚のロースの盛り合わせです。ゴールデンボアポークという淡路島で生産される猪と掛け合わせた豚を選びました。比較的高温で一気に揚げるようで、7人分の様々な豚肉をフライヤーに一気に投入していきます。これで揚げ上がりが狂わないのは長年の熟練の技術によるものと思われます。
塩は炭塩と白トリュフ塩、ソースはとんかつソースとオリジナルソースからの選択で、白トリュフ塩とオリジナルソースにしました。前回は通常の盛り付けでしたが、今回は断面を上に盛り付けられています。ヘレはほのかなピンク色の断面で柔らかく旨みがあります。ロースは脂の香りが良く、僅かに野趣があります。ご飯、キャベツ、味噌汁、お新香も美味しいです。お新香に鰹節がかけられているのが珍しいです。フォアグラやエシレバターなどの変わりかつも評判なので、複数で訪れる場合は注文するのも良いでしょう。
大阪のとんかつの水準は急激に上がって来ていますが、先駆者的なこの店に一度は行くべきだと思います。
お勧めポイント
●熟練の揚げ技術
●ユニークなメニュー構成
大手証券会社の調査業務に携わる傍らでグルメアナリストとしても活躍。さまざまな料理を食べ歩き、著書『ラーメンの経済学』(KADOKAWA)で話題に。料理の背景や素材、流通に至るまで、幅広い視点での鋭い洞察が特徴。