和食STYLE

⾼橋綾⼦のNO SUSHI, NO LIFE – 第二五回 天本

第二五回 天本

オープン半年で二つ星! 脅威の快進撃

最初にお会いしたのは大将の天本正通さんが準備期間だった時。お鮨屋さんの前に銀座に移転される前の日本料理「しのはら」に修業に行くと仰って、開業したら教えてくださいね〜なんて軽く言っていたのが懐かしい。実際、オープンしたらあれよあれよという間にミシュラン二つ星を獲り、食べログアワードもGOLDだし、「Gault Millau」にも掲載され、もちろん早々に予約困難店となってしまい、もはや遠い存在です。

オープン当初は飲む人は35,000円、飲まない人は25,000円でギブアップするまで際限なく出てきました。おつまみは「しのはら」での修業が功を奏して焼物はふんわりした焼き加減だし、「煮蛸」は肉厚で歯切れよく炊いてあったり、「鯨」や「鮑」の食感や味わいも秀逸。とにかく使っている食材が申し分ないんです。だから出されるままに食べてしまい、気づけば15品くらいいっちゃって「これっていつ握りになるの?」って聞いて「まだあと15品くらいは用意しているのですが、ではそろそろ握りに」ってなったような記憶があります。

当時の話ですが、つまみに比べて握りはどうかなぁ?と思いました。タネは素晴らしいし、下ごしらえも上手なので酢飯の問題かと。なんというかうまく解けないというか、タネとの一体感がないんです。そしてさらに止まることなく出るわ出るわ。握りもおそらく15〜 6貫は食べたんじゃないかと。なんというサービス精神なのでしょうか。「食べてもらいたいものがたくさんあるんです」と握りも25貫くらいの準備があると仰っていました。食べさせたい=言われたら食べたくなる、のループに陥り本当に腹パンで死ぬかと思った。

まぁ、そんな思い出があり、予約も取れないしで しばらくお伺いすることがなかったのですが、 あまりに凄い快進撃なのでもう一度食べたくなって常連さまにお席をお願いして連れて行ってもらいました。かなりのお久しぶりでしたが、ひと回り大きくなった天本さんに温かく迎えていただき、つまみからスタート。相変わらず出てくるつまみはいい! さらに高級食材も増えた気がします。そして握り。う〜ん、やっぱり私的に は満足いかないかも。酢もちょっときついかな。ま、お酒は進みますけどね。そしてお会計はもちろん 5万円いかないくらい。今は余裕で超えちゃってるとの噂です。私の周りはみなさん絶賛しているのでもしチャンスが来たらぜひ行ってみてください。

綾⼦の⾃分勝⼿評価基準
おひとりさま度:ひとりではもちろんのこと、たとえ初めてでも楽しめるかどうか。また何か素敵なことが起こるか、客層はどうかも含む。
⼝福度=価格の満⾜度:鮨⾼騰の折、基準は⾷べて飲んで 4万円以下。おいしいは当然、⽀払いをした時にどう感じたか。
ロケーション&設え:「google map」で迷わずたどり着けるか。内観のセンス、器や酒器、トイレの清潔感など店内の印象。
サービス:スタッフの接客の満⾜度
のどの渇き度:完璧に個⼈的主観だが、塩分過多などでのどが乾くような味が苦⼿。評価は星が多いほど、のどは渇かないということ。

【評価】
おひとりさま度 ★★
⼝福度=価格の満⾜度 ★★
ロケーション&設え ★★★★
サービス ★★★
のどの渇き度 ★★

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⾼橋綾⼦
(たかはしあやこ)

フードパブリシスト。国内外ファッションブランドのプレスとして従事した中で肥えた“食”へのこだわりは、その後の素晴らしい人々との出会いと相まっていつしか人⽣そのものに。
その間に培った食のデータと人脈を武器に、年間 1000 軒ほどの外食で“喜ばれるレストラン”の発掘に勤しむ⽇々。「綾⼦のギョーカイ総受けグルメ手帖」「BRUTUS」「GQ」「食べログマガジン」「集英社オンライン」などに寄稿。BS フジ「リモート☆シェフ」では審査員として定期的に出演。
東京都主催の食の祭典、「Tokyo Tokyo Delicious Museum 2023」のプロデューサーに就任。また企業のメニュー開発やアドアイザーにも携わる。おいしいものしか喉を通らない不思議体質。