檀崎真由美のボルドー通信『フランス必食N E W S』④
今回のボルドー通信は、4月末に開催されたボルドーワインのプリムールについて。
ワインプロフェッショナルの友人からプリムールのお誘いを受け、参加する機会を頂いたので、その様子を少しお届けしたいと思います。
プリムール(Primeur)とはフランス語で『真新しい』を表す言葉。
ボルドーワインのプリムールとは新酒の試飲会を意味し、前年度に収穫された葡萄が樽熟成されている最中の新酒ワインを先物取引するボルドーワイン独自の販売システム。
長期熟成型高級ワイン格付けシャトー(ワイン生産者)が主体となり、4月のPRIMUERS WEEK期間に世界中からワインジャーナリストやワインプロフェッショナルが招待され、多くの人が訪れます。
UNION DES GRANDS CRUS DE BORDEAUX(ユニオン・デ・グラン・クリュ・ドゥ・ボルドー)団体所属のシャトーはアペラシオン(原産地)毎に開催されているテイスティング会場に一同に集い、ヴィンテージワインを纏めて試飲する事が出来ます。
ユニオンに属していないシャトーは独自でプリムールの試飲準備をしているので、直接シャトー訪問となります。今年のサンテミリオン地区のテイスティング会場はこちらのシャトー・ヴァランドロー。
ボルドーのワインは、葡萄の収穫 ⇒ 葡萄の選定 ⇒ 圧搾 ⇒ 一定の熟成期間 ⇒ アッサンブラージュ(assemblage)=複数の葡萄の品種を組み合わせブレンド ⇒ オーク樽で長期熟成 ⇒ ワインボトルに納め ⇒販売となります。
その樽熟成中のワインを試飲しながら、今後更なる熟成期間を経てどの様に変化していくのかイメージして、皆熱心にテイスティングノートに書き留めています。
世界的ワインジャーナリストやネゴシアン(ワイン商)、ワインプロフェッショナルの評価を基準に各シャトーがワインの値段を定め、早い所で5月中旬から販売金額の発表となります。シャトーによってはこのプリムールで売り上げの7割が決まるそうです。
長期熟成のボルドーワインは、このプリムールのシステムで先行販売する事によりシャトーは運営資金調達が可能となり、購入側は人気シャトーの銘柄ワインを値上り前に購入する事が出来、双方に利点のあるプリムールシステムが構築されています。
2022年のボルドーの気候は40度を超える猛暑が続き、それがどう影響するのかと注目を集めていましたが、私の試飲時に聞こえてきた声はどのシャトーも今年はとても素晴らしく、ユニークとの事。
シャトー・ヴァランドロー(Château VALANDRAUD)、シャトー・ラ・トゥール・フィジャック(Château La Tour Figeac)、シャトー・グラン・メイヌ(Château Grand Mayne)が私には印象的で今後どの様な味わいに変化していくのか楽しみです。
私はワインのプロではないので個人的な感想は控えさせて頂きますが、ミレニアムな年のワインを試飲出来、貴重な経験をさせて頂きました。
この翌日に訪れたシャトー・ラグランジュについては次回お届けします。
こちらは昨年開催されたプリムールのソワレの様子で、場所はソーテルヌにある貴腐ワインとして名高いChâteauD’YQUEM(シャトー・ディケム)。
私はかつて日本のフランス料理店で働いていた時からその美味しさの虜になっています。日本では食後酒として最後に楽しみますが、生産地のソーテルヌやボルドーでは食前酒としてもフォアグラやフロマージュとイチジク等と合わせて楽しんでいます。
担当シャトーは盛大なイベントを企画開催し、招待客を最大限にもてなし、皆一同にワインを片手に豪華なカクテルディナーを楽しみながら遅くまで語り合います。
ボルドー市内からソーテルヌ村迄は距離があるので、招待客用の送迎バスも用意されています。私は子供の事を考え、雰囲気だけ楽しみ一足早く帰宅しようと思い、マイカーで出向きましたが、シャトー・ムートン・ロートシルト始めグランクリュのワインが勢揃いしているのを横目で見ながら、帰りの運転の事を考えてグッと我慢。
因みにフランスではアルコール1杯迄なら飲酒運転には当たりません。
帰り際のクロークにアルコールチェックキッドがきちんと用意されています。一緒に行ったワイン商のシンガポールの友人が『MAYUMI私が帰り運転するよ!』と親切に何度もアルコールチェックをやり直してくれる姿が微笑ましかった。でも彼女は仕事柄しっかりとワインを味わっていたので、テイスティングすらセーブして飲んでない私が責任持って彼女を送り届けましたよ。次回は心ゆくまで極上のワインを堪能し、プリムール専用送迎バスを利用するぞ!と心に誓いました。
最後に味見したシャトー・ディケム1989が感動的に美味しくて、もっと飲みたいよー!と心で叫びました!!簡単に手が出せる値段ではありませんが、機会があれば是非味わって頂きたいです。
フランスボルドー在住料理家。ダンラキュイジーヌ(Dans La Cuisine)主宰。
La société MT GESTION CULINAIRE共同代表(フランス)。
Alchemist.Pte.Ltdコーポレートシェフ(シンガポール)。
和洋中の料理を専門的に学び、著名な一流シェフのアシスタントを経験後、仏料理店『シェ松尾』で5年修行し独立。
クッキングスタジオでの料理教室開催、大手企業や海外一流ブランドのパーティーフードをシェフとして手掛け、人気を集める。アメリカ、シンガポール生活後、現在ボルドーを中心にフランス政府正規就労許可の元、料理教室、オンラインレッスンを開催。英語と仏語でも和食レッスンを行い、全国放送『F R A N C E3』にてお節料理を作り、自身の料理活動と共に紹介される。フランス料理だけでなく、和食、本格中華点心迄ワンランク上のクオリティーに仕上げるテクニックで国内外問わず活躍中。