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日々是和食

さかな歳時記「二十四節気・立夏」 味も満開。魚の王者マダイ

二十四節気●立夏●5月5日

なんと立派なお造り。さすが、味といい、姿といい、非のうちどころのない魚の王者、鯛であります。
ひとくちに鯛といっても、アマダイ、キンメダイなど、タイと名のつく魚は300種近くあります。
が、王者の風格にふさわしいのは、なんといってもこのマダイ。美味なる季節や、明石や鳴門など名産地の名もいただく別格の魚です。以下より、マダイの季節はずれを表す語句を選びなさい。


①魚島の鯛
②桜鯛
③麦わら鯛
④紅葉鯛

【解説】

祝いの春の食卓に並べたい魚といえば、昔もいまも鯛にとどめをさすよう。色にちなんで春は桜鯛と呼び、秋の紅葉(もみじ)鯛と合わせて、年に旬が2度やってくる。
まず最初の旬は2月から5月にかけて。桜前線と同じように南からはじまり、北上する。ちょうど北国の桜が満開になるこの季節は「魚島(うおじま)の鯛」の季節。「桜鯛」は晩春、「魚島」は初夏、ともに季語として使われる。魚島とは、鯛などの魚が産卵のために集まり、海面が盛り上がったようにみえる現象をいう。
マダイは春から初夏にかけて水温が15度以上になると、産卵のため沿岸に近づいてくるのだ。桜鯛、魚島の鯛の旬をすぎると産卵後の味が落ちた「麦わら鯛」と呼ぶ。これは麦の収穫期と重なることから。秋にはふたたび「紅葉(もみじ)鯛」として旬を迎える。



産地といえば、古くから瀬戸内海や兵庫県近海が知られる。摂津(大阪)湾には、江戸時代、マダイが産卵のために群れをなしてやってきたという。まさしく「魚島の鯛」と呼ばれ、大坂人を夢中にさせた。「魚島に桜鯛食わねば浪花人の恥」ともいわれ、井原西鶴の「日本永代蔵」には、魚島の鯛を漁期が過ぎても高く売るために、釣り針のかけぐあいを工夫して長く生かすことを夢見る話がでてくる。
明石で水揚げされたものは「明石鯛」として珍重される。明石と淡路島を結ぶ明石海峡大橋。橋の下に広がる海、播磨灘(はりまなだ)は昔から有名なマダイの漁場。なぜなら、播磨灘は、春はイカナゴ―阪神名物“くぎ煮”でおなじみ―の大産卵場となり、その雑魚目当てにエビやカニが集まる。「えびでたいを釣る」というたとえどおり、マダイはこれが大好物。マダイは、顔と向き合うとわかるが、丈夫な歯と発達した下あごをもち、甲殻類でも貝類でもバリバリ噛み砕く。あのうまみは、こうしたえさ、えびやかにのうまみ成分、タウリンが身にしみついたものだ、といわれる。



柳刃包丁の長さを使って一気に刺身を引く平造り(左)、斜めにうすくそぎ繊維を断ち切り柔らかく仕上がるそぎ造り(右)。桜色に輝く鯛の刺身のひき方を変えることで、皿の上に表情が生まれ、華やぎがいっそう増す。

この時季のマダイは、おろし身を刺身で食べるのもうまいが、霜降り刺身(皮霜造り)もおすすめだ。柵取りした上身を、皮を上にしてまな板にのせ、その皮に熱湯をかけると、皮が縮んでくる。これを手早く氷水にとり、すぐにそこから取り出してさらしで水分をよくふき取って、刺身におろして出来上がり。



マダイは皮と身の間にうまみがあるので、皮に熱湯をかけて皮霜造りにするのもおすすめ。

皮のほうがくるっと縮んで、淡い桜色の縮緬(ちりめん)絞りのようになり、一片一片の刺身の反り加減が、ぐぐっと食欲をひきつける。



鯛のあら炊き。食材を無駄にしない心意気がつまっている。

マダイは良質のたんぱく質やミネラルを多く含むうえ、カロリーは牛肉、豚肉の半分以下。頭や骨は煮物や潮汁やかぶと煮にすると美味。とくに目の後ろの肉は絶品だ。骨はだしが出ておいしく、余すところなく使える、やはり魚の王者にふさわしい魚である。
「腐っても鯛」の言葉どおり、うまみ成分のイノシン酸は分解されにくく、死後しばらくしてからも味が落ちにくいという。とはいえ、やっぱり、鮮度が命。イキのいいうちに、めしあがれ。



愛媛の「鯛めし」は2種類あり、松山・今治・新居浜など中予から東予では米とタイを丸ごと炊き込む「炊き込みご飯」風。これは、もうひとつの、南予地方の郷土料理、宇和島鯛めし。タイの刺身を生卵入りの特製のタレにひたして食べる。  宇和島市水産課 提供
 

日本さかな検定協会 代表理事 尾山 雅一

【解答】③麦わら鯛   
 

日本さかな検定(愛称:ととけん)とは

近年低迷が続く日本の魚食の魅力再発見と、地域に根ざす豊かな魚食文化の継承を目的として2010年から検定開催を通し、思わず誰かに伝えたくなる魚介情報を発信する取り組みです。
この四半世紀に街の魚屋さんが7割近くも姿を消し、またいまや地方にも及ぶ核家族化により、魚の種類・産地・季節・調理の情報や、祖父母に教えられた季節の節目に登場する魚の由来や郷土の味が伝わらなくなっています。
魚ほどそれをとりまく情報や薀蓄が価値を生む食材は他にないのに、語るべき、伝えるべき魅力が消費者に届かなくなっているところに、「魚離れ」や特定魚種への好みの偏りの一因があると捉え、愉しくおいしい情報を発信する手段として日本さかな検定が誕生しました。
2010年の第1回を東京・大阪で開催、2015年の第6回では八戸から福岡の12会場、昨年の第7回では函館から福岡にいたる11会場へと広がり、小学生から80歳代まで累計2万名を超える受検者を47都道府県から輩出しています。
平成29年は、6月25日(日)に札幌(初)・石巻・東京・静岡・名古屋・大阪・兵庫香美(かみ・初)・宇和島・福岡の全国9会場で、6歳から88歳まで2800余名を集めて開催しました。
また今年行われる第9回の日本さかな検定は「2018年6月24日(日) 札幌 酒田(初)石巻 東京 静岡 名古屋 大阪 兵庫香美 下関(初)――5月21日申込み締切り(5名以上のグループ受検は5月14日締切り」となっております。
詳しくは、「ととけん」で検索、日本さかな検定協会の公式サイトをご覧ください。

日本さかな検定協会 http://www.totoken.com/