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さかな歳時記「二十四節気・春分」 小さな春の風物詩

二十四節気●春分●3月21日

春は小さきものが蠢(うごめ)く季節。魚界でもイイダコ、ノレソレ(アナゴの稚魚)、シラウオ、イサザ(シロウオ)・・・。そしてホタルイカ。1月にボイルした小指の先ほどのちっこい新ものが登場、それがしだいに大きくなり、今の時季からゴールデンウィークにかけては群れなすように店頭を賑わせます。3月から漁が始まり、ホタルイカの「身投げ」が見られる産地を選びなさい。


①富山湾   ②若狭湾   ③相模湾   ④駿河湾

【解説】

3月下旬からGWにかけてあれほど店頭や居酒屋などの食卓を賑わすホタルイカ。春が終わりを告げると、潮が引くように姿を消す。こんな動きをみせる魚介類は少なく、小さきものたちの春、といえば真っ先にホタルイカが思い浮かぶ。



膨れあがったホタルイカの肝

産卵のために日本海側に押し寄せるホタルイカは、兵庫県や京都府からの入荷も多いが、3月以降、富山県産の入荷が本格化してからがハイシーズン。肝はもはやパンパンに膨れ、複雑にして濃厚な味。ホタルイカの味の決め手は、肝にどれだけ脂がのっているか、であり、富山湾産はほかの追随を許さず、といったところ。
その秘密は富山湾の地形にある。岸近くでも水深200~300㍍のすり鉢状となっており、深海性のホタルイカは、湾の奥までやってくる。それだけ成熟しており、だから、うまい。
なかでも富山県滑川(なめりかわ)市は、天正13年(1585)年のホタルイカ漁の記録を残し、ミュージアムまである有数の産地。



漆黒の海、沖合にしかけた定置網を漁師がひいていくとチカチカッと青く鋭い光を放つ、ホタルイカの水揚げ。


ボイル(釜ゆで)されたホタルイカ

富山湾に面した滑川は、ホタルイカ一色の町だ。駅を出て歩く石畳には踊るホタルイカの絵が。マンホールには漁風景。3月1日に漁が始まり中旬になると、いよいよ出荷の最盛期となる。
漁港近くの加工場にはホワホワと湯気がたちこめ、50㌔単位でホタルイカが釜ゆでされていく。この時期には生の出荷も忙しい。積み重なったホタルイカの山から、トレーに並べていく作業だ。ベテランとおぼしき女性たちにより淡々と作業が続く。



刺身でいただくホタルイカ。真ん中に山盛りになっているのは地元で「竜宮そうめん」と呼ばれる足の刺身。新鮮なうちには生で食べられる。

ホタルイカの料理といえば、まずは酢味噌和え。滑川のスーパーでは酢味噌と並べて売っているほど定番中の定番だ。
江戸の昔、加賀藩前田候が滑川にお越しの際の献立にもある伝統の味だ。



そのほか、小鍋仕立てのしゃぶしゃぶ。昆布を浮かべたおつゆに生のホタルイカを泳がせ、ゆであがったはしからポン酢醤油でいただく。子どもたちにも人気なのがフライで、ボイルしたものを丸ごと揚げる。生のほうがおいしそうだが、肝が破裂してとんでもないことになる。



3月下旬からGWにかけての新月の夜、浜辺にはホタルイカたちが次々と自ら浜に上がり、「身投げ」する光景がみられる。この時期、産卵のために浜辺に近寄ってくるのだが、新月の夜は月明かりがないために、感覚が狂い浜に近寄りすぎて波に打ち上げられてしまうのだ。いまや、観光客も集まる名物となっている。画像提供:富山県観光課


ミステリアスな光を放つホタルイカの発光

ところで、私たちの口にはいるホタルイカはすべてメスだということをご存知だろうか。富山湾のホタルイカ漁は春の産卵期に重なる。実はその時期、もはやオスはいない。冬に精子の入ったカプセル(精莢)をメスに託すと、そこで役目は終わり。死んでしまうのだ。残ったメスは、たくましくもひとり(?)身ごもり、たくさんの子孫を残すことになる。オスが店頭デビューすることはないのだ。 ひっそりと陰の存在。誉(ほまれ)はすべてメスにあり。

 

日本さかな検定協会 代表理事 尾山 雅一

【解答】①富山湾   
 

日本さかな検定(愛称:ととけん)とは

近年低迷が続く日本の魚食の魅力再発見と、地域に根ざす豊かな魚食文化の継承を目的として2010年から検定開催を通し、思わず誰かに伝えたくなる魚介情報を発信する取り組みです。
この四半世紀に街の魚屋さんが7割近くも姿を消し、またいまや地方にも及ぶ核家族化により、魚の種類・産地・季節・調理の情報や、祖父母に教えられた季節の節目に登場する魚の由来や郷土の味が伝わらなくなっています。
魚ほどそれをとりまく情報や薀蓄が価値を生む食材は他にないのに、語るべき、伝えるべき魅力が消費者に届かなくなっているところに、「魚離れ」や特定魚種への好みの偏りの一因があると捉え、愉しくおいしい情報を発信する手段として日本さかな検定が誕生しました。
2010年の第1回を東京・大阪で開催、2015年の第6回では八戸から福岡の12会場、昨年の第7回では函館から福岡にいたる11会場へと広がり、小学生から80歳代まで累計2万名を超える受検者を47都道府県から輩出しています。
平成29年は、6月25日(日)に札幌(初)・石巻・東京・静岡・名古屋・大阪・兵庫香美(かみ・初)・宇和島・福岡の全国9会場で、6歳から88歳まで2800余名を集めて開催しました。
また今年行われる第9回の日本さかな検定は「2018年6月24日(日) 札幌 酒田(初)石巻 東京 静岡 名古屋 大阪 兵庫香美 下関(初)――2月2日よりWEB先行申し込み開始」となっております。
詳しくは、「ととけん」で検索、日本さかな検定協会の公式サイトをご覧ください。

日本さかな検定協会 http://www.totoken.com/