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食の国日本〝食〟プロデューサー 松田龍太郎ブログ

Foodnia Japan 食の国 日本 連載 第38回

[香港で日本酒を売り込め! 牡蠣と日本酒の組み合わせはベストペアリング!]

11月初旬。僕は香港へと飛ぶことになった。

今回のミッションは、新潟清酒組合の皆さんとともに、香港マーケットに日本酒を売り込むこと。さらに、新潟のお酒に特化したプロモーションを仕掛けるにあたり、昨年度より新潟清酒組合と日本貿易振興機構(JETRO)が企画していた、「食材と新潟清酒のペアリング」をBtoB向けマーケット(いわゆるバイヤーやインポーター向け)に提案すること。マーケティングリサーチと、「地域団体商標」としての「新潟清酒」のブランディングを実施するという役割を担っている。

今回仕掛ける大きなテーマは、食材となる「牡蠣」と新潟清酒の組み合わせ提案だ。牡蠣を含む魚介類は、ワインを合わせると生臭みが発生し食事を楽しめないことが多い。なぜなら、魚介に含まれる過酸化脂質と、ワインの鉄分がバッティングし、生臭みが発生することがわかったのだ。特に鉄分が1ppm以上だとより一層生臭みを感じやすいというもの。ちなみに牡蠣といえば白ワインの「シャブリ」を思い出す方がいらっしゃるかと思いますが、シャブリは、そのワインのなかでも、とりわけ鉄分が低く、牡蠣と相性が良いことからフランスでもペアリングで好まれているというわけだ。

そんな中、新潟清酒の鉄分含有量は、ワインのなんと1/100! なるほど魚介と日本酒が合うのは、単に日本で刺身などの生魚を食する文化があり、それと日本酒が合う、だけではなく、科学的にも相性が良いということが証明されていたのである。また牡蠣と合わせることで味のバランスがよくなるタイプや、酒で口の中をリフレッシュさせるタイプ、牡蠣と調和して味が広がるタイプなど、味香り戦略研究所と、新潟県醸造試験場とでそれぞれ分析、セレクトいただいたものを香港に持ち込む作戦だ。

さてその魅力が香港人に伝わるであろうか。もちろん単純に持ち込んだだけでは「伝わらない」。

みなさんは「酒サムライ」という存在をご存知だろうか。日本酒造青年協議会が定めた、「日本酒を愛し、日本酒の素晴らしさを国内外に広めることに貢献している、または貢献できる可能性を持つものが、推薦され、叙任」されるもので、日本人、外国人などが任命されております。

そこで今回、新潟清酒のアンバサダーとして、酒サムライでもあり、香港在住のミッキー・チャン氏に、牡蠣と新潟清酒のペアリングについて、プレゼンテーションしてもらい、よりBtoB向けにもわかりやすく、現地の言葉で伝えていただくことを企画した。あわせて、BtoB商談会の他に、今年で5回目となる、すでに香港でも人気の日本酒イベント「新潟 ミニ酒の陣 Niigata Sake Festival」も合わせて開催。

さて、そんなプレゼンテーション&イベント当日。久しぶりの香港は11月にしては暖かく、天候も晴れやか。会場となった香港市内のホテルのボールルームでは、新潟清酒組合から90の蔵元のうち、海外に販路を持っていたり、これから仕掛けたりすることを考えている蔵元30が出店。もちろん「牡蠣」とペアリングする日本酒もあらかじめ選定され、各蔵元で用意、万全の体制である。

プレゼンテーションは、ミッキー氏の軽快な広東語で進められ、生牡蠣と「シャブリ」そして新潟清酒からは「吟醸 極上吉乃川(吉乃川)」「北雪 純米吟醸NOBU(北雪酒造)」の2種類とともに、バイヤー、インポーター、そして現地メディア関係者に試食試飲をしていただいた。

実際に食べて、飲んだ印象として、皆日本酒との相性の良さを感じ、感触としては上々だ。一方で、香港においての「日本酒市場」については、ここ最近需要が非常に伸びており、可処分所得も高いゆえに、「ワイン」の次の高級酒として「Sake(日本酒)」は非常に人気である。またその嗜んでいる大半は、いわゆる「若い女性」が多いのだ。Sake festivalでも、多くの参加者に恵まれ、300人を超えるお客様が来場した。なかなか新潟の酒蔵30、そしてそのフェスティバルだけは、残りの60蔵のお酒も登場し、全部でおおよそ200品目の日本酒にありつけるというから、舌の肥えた香港人は見逃せない企画だろう。蔵元も、インポーターや、外国語を話せる日本人の営業スタッフを配置し、それぞれ思い思いのプレゼンを来場者に仕掛けている。関係者によると、この光景は5年前とは違い、圧倒的に日本酒を嗜む香港人が増えているという印象だそうだ。確かに、欧米人よりは純粋な香港人が嗜んでいるという形だ。単に「日本食」「和食」がブームというだけではなく「日本酒(Sake)」も浸透していることは間違いない。

いま、全世界にみると、やはり圧倒的に日本酒が流通しているのはアメリカで、ニューヨーク、サンフランシスコ、フロリダ、ハワイの飲食店やスーパーなどの小売に販売されている。特に、高級業態や日本料理屋では、ワイン1本と同量の日本酒の四合瓶(720ml)がワインと変わらない値段、8000-15000円で値付けされている状況だ。これからのマーケットはアジアに広がっていくだろうが、所得や環境、価値などを考えると、まだまだ5-10年はかかると予想される。一方で国内は「作り手、担い手不足」といった社会的状況から、どのくらいの酒蔵が伝承され、収量が確保できるかが読みきれない。この日本酒に対する期待値と、それを実現していくフィジビリティが、今後の鍵になるのではないか。海外における販路拡大と販売促進には、大きなビジネスチャンスとともに、リスクも潜んでいることは間違いない。

日本の食を海外に伝えていくことは増えているのは間違いないからこそ、それを支える基盤と、担い手育成の必要性を感じた香港であった。

新潟清酒組合:http://www.niigata-sake.or.jp/

新潟 ミニ酒の陣:http://afoods247.com/sakefestival.jp.html

酒サムライ:http://www.sakesamurai.jp/

松田龍太郎

松田龍太郎

1977年生まれ。青森県弘前市出身。慶応義塾大学環境情報学部卒業後、日本放送協会に入局。
報道カメラマンとして、全国各地の事件事故、災害など日々のニュースの現場をはじめ、紀行番組の撮影に従事。その後、2007年企画・プロデュース業に転職。2010年より株式会社オアゾ代表を務める。
積極的に女性クリエイターを活用し、特に食にまつわる事業・店舗開発、PRコンテンツ制作を得意とする。現在神楽坂6丁目に「八百屋瑞花」という青果販売する八百屋 を展開中。
http://www.oiseau.co.jp