和食STYLE

食の国日本〝食〟プロデューサー 松田龍太郎ブログ

Foodnia Japan 食の国 日本 連載 第27回

「世界のベストレストラン50」初登場。長谷川氏率いる「傳」の魅力。

グルメ界のアカデミー賞とも称される「世界のベストレストラン50」が、先日オーストラリアのメルボルンにて発表されました。実は、ミシュランもさることながら、このベストレストラン50が現在、非常に注目を浴びております。

そのなかで、今年ジャンプアップどころか、新登場45位! 日本でいうと、青山にある18位の「NARISAWA」につぐランクに入って来たのが、「傳(でん)」という和食料理のお店です。店主の長谷川在佑さんは、東京、神保町に出店後、わずか3年でミシュラン2つ星を獲得。18歳のときに神楽坂の料亭で修行し、29歳のときに自らのお店を開店させました。

僕が長谷川さんのお店に共感しているのは、「高級料亭と居酒屋の間の日本食のポジションを作ったこと」です。以前働いていた会社で経営していた和食のお店もそういう店づくりをして、ファンも多く、僕も大好きなお店の一つです。それでいて、アイデンティティとして、和食を大事にしているところです。実は、20−30代の若手で、日本食をメインとし、こうして成功している人は少ないです。そのほとんどが、イタリアンやフレンチの業態ばかり。もちろん一概に業界の問題とはいえませんが、逆に海外の方が、教育や伝承においては、進んでいるのかもしれません。

そういうお店を目指すお客様はもっと素直です。海外からのお客様も多く、先日伺ったときは、外国人グループが団体でこられていました。そして傳のスタッフも外国語でスマートに対応。なにより厨房では、外国人スタッフも研修や勉強をしたいということで、増えているそうです。

先日、神保町から神宮前に引っ越し、新たなスタイルになった傳。今まではカウンターの提供もありましたが、今回はそれをやめて、カウンターが見える大きなテーブルを配置。厨房から全てを見渡せ、それでいて大人数に対応するやり方はとても新しく感じました。

また、おまかせのコースも奇を衒わず、旬なものを、一番美味しい食べさせ方で提供するスタイルには、逆に新鮮さを感じました。私も八百屋を経営する身ですが、旬のものを旬に提供すること、そしてその味わいこそが、野菜の一番美味しい時期であることを知っています。そうした中で、傳がやっていることはとても素直で、なにより美味しく味わえるコツを知っている印象です。

それを提供する長谷川さんのキャラクターもあいまって、より美味しさを増幅させる装置のような存在になっています。僕も傳自体はなかなか行く機会もなく、今回はたまたまキャンセルで空いていたところに飛び込みで行かせていただきました。けれど、世界45位の立ち位置、評価というのは間違っていないと思います。高級料亭でもなく、居酒屋でもなく。世界に打って出る「日本食のあるべき姿」を感じるレストランです。ぜひ予約を頑張ってとって(笑い)、厨房が見えるテーブルに座って、傳ワールドを楽しんでもらいたいです!

日本料理 傳:http://www.jimbochoden.com/

 

The World’s 50 Best Restaurants:http://www.theworlds50best.com/

松田龍太郎

松田龍太郎

2010年より株式会社oiseau(オアゾ)を設立。主に食にまつわる事業開発・店舗開発では、これまで50店舗以上を手掛け、一方企画・プロデュースの分野では、元テレビ局カメラマンとして、食に限らずメディア、PRコンテンツの発信、企画展開を得意としている。2020年4月より「奈良蔦屋書店」2階に「ブラッスリーアンド カフェ ウグイス」として新たなポップアップレストランを、そして同じく同月、青森県弘前市に開館予定「弘前れんが倉庫美術館」に付帯するカフェ「CAFE & RESTAURANT BRICK」を、それぞれ立ち上げ、運営・事業を作り上げている。
http://www.oiseau.co.jp