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食の国日本〝食〟プロデューサー 松田龍太郎ブログ

Foodnia Japan 食の国 日本 連載 第25回

無糖、アルコール度数38%。ありそうでなかった唯一の梅酒が若狭に。

先日、「梅酒の海外販路相談」ということで、福井県は若狭(わかさ)町まで足を運んだ。

会社に入るなり、僕の目に飛び込んできたのは、この「BENICHU38°」(ベニチュー38ド)」という商品である。梅酒といえば、その甘さと飲みやすさが男女ともに人気が高いリキュールだ。ただ、この商品は、砂糖など糖類を一切使わない無糖の梅酒で、アルコール度数はなんと38%もあるのだ。

試飲させていただくと、飲み口はアルコール感が強いが、味わいには梅の酸味を感じさせ、香りもまた梅の香りが残っている。いわゆる「ドライ」な感じなので、食中酒としても十分合う。

ウィスキーや紹興酒のような深い味わい、ロックでもよし、水割りでもよし、酒好きにはもってこいのお酒だ。この訪問の直前には、香港で試飲会を開催、好評を博し、特に昨年からは中国大陸でも流通が生まれているという状況だ。

僕も意外だったのは、梅が福井の特産品であることだ。福井県の梅の生産量は全国の1~2%を占める程度に過ぎないが、日本海側としては一番の産地であり、特に福井県の梅栽培の歴史は古く、江戸時代末期に若狭町ではじまったといわれている。

栽培されている梅の二大品種は「剣先(けんさき)」と「紅映(べにさし)」。エコファームみかたの商品には、すべて「紅映」を使っているそうだ。品質は、紀州の南高梅に勝るといわれ、一時はその栽培が全国各地に広がったとのこと。しかし栽培の手間、栽培面積あたりの収穫量が少ないなどの理由から、現在その産地は、ほぼ100%福井県内に限られ、しかもその70%以上が紅映梅発祥の地である若狭町で栽培されているそうだ(★)。

商品を販売しているのは福井県若狭町にあり、梅酒や梅加工品を手がける「エコファームみかた」。甘くない梅酒は約4年前に発売し、3年前にBENICHUブランドにリニューアルしたという。むかし僕の祖母が、自宅の軒先に植えられた梅から実を収穫し、焼酎と角砂糖で漬け込み、梅酒にしていた。今回の梅酒は、「無糖」でかつ「アルコール度数が高い」こともあり、非常に興味深い。酒好きな方にはぜひオススメしたい。

(★)参考文献:渡辺 穀著「福井の梅 紅サシ」福井新聞社刊行

・エコファームみかた https://www.ecofarm.jp/

 

松田龍太郎

松田龍太郎

2010年より株式会社oiseau(オアゾ)を設立。主に食にまつわる事業開発・店舗開発では、これまで50店舗以上を手掛け、一方企画・プロデュースの分野では、元テレビ局カメラマンとして、食に限らずメディア、PRコンテンツの発信、企画展開を得意としている。2020年4月より「奈良蔦屋書店」2階に「ブラッスリーアンド カフェ ウグイス」として新たなポップアップレストランを、そして同じく同月、青森県弘前市に開館予定「弘前れんが倉庫美術館」に付帯するカフェ「CAFE & RESTAURANT BRICK」を、それぞれ立ち上げ、運営・事業を作り上げている。
http://www.oiseau.co.jp