和食STYLE

食の国日本〝食〟プロデューサー 松田龍太郎ブログ

Foodnia Japan 食の国 日本 連載 第11回

地域は最適化の時代へ。里山の風景を残すために。

すっかり師走も半分を過ぎた。あっという間に街はクリスマス。

11-1

今年は暖冬なのか寒いのか、毎日ころころ気候が変わる。

恵まれた晴天が多く、乾燥した冬は、インフルエンザも流行りはじめが早い。

今年は早々に、予防接種を済ませ、まだまだ年内日本を走り回る覚悟だ。

11-2

そんな中、兵庫の奥、丹波篠山へ出向くことに。

最近、地方で元気にしている企業との波長が合っている感じがする。その極め付けが、一般社団法人NOTEだ。

小さな集落の里山の風景を残すため、集落の古民家を買い付け、それをリノベーションし、ホテルや旅館にコンバージョン。それを、なんと集落の住民が運営するという画期的な手法を編み出し、移住定住を促進している、面白い会社なのである。その代表を務める金野氏と、彼らの事案を巡るツアーを先日開催した。

11-3

特に彼らの本拠地である丹波篠山は、街中にホテルの機能を点在させ、その点在した場所の古民家を再生し、ホテルやレストラン、お店に変えて、そこに若い人たちが住み、営業をしているのだ。もちろんホテルのプロも入っていて、サービスの純度を上げている。最近では海外からのお客様も多く、インバウンド効果も望める。

11-4

11-5

そのプロジェクトの中でも「集落丸山」は是非見てもらいたい。

篠山の街中から車で5分。山あいの小さな集落で、家屋は7軒のみ。元は2軒の地主しかおらず、空き家だったその地域をNOTEは2軒をホテルにコンバージョン。そしてレストランを運営させて、その運営者たちも住み込み、さらに住宅をリノベーション。

11-6

11-7

そしたら、耕作放棄地も徐々に減り、いつのまにか耕作放棄地もゼロとなり、丹波篠山の名産「黒豆」を育てる農家が生まれてしまった。名産地としては、後継者不足で悩み、耕作放棄地も増えていたこともあったので、これはうれしい悲鳴だろう。

集落は、里山の風景を継続させ、住む人が再び根を下ろし始めようとしている。また森林の間伐をすることで、動物もまた、自分たちの領域を認識し、人間との距離感を取ろうとしている。最近では、シカやイノシシ、クマといった「ジビエ」と持てはやされている実態もまた、人間と動物の境界線の変化だけではなく、そうした環境を維持できないことにもつながった結果だ。少しずつ「あるべき生態系」を取り戻しつつも、「最適化される地域」は、人口減少する日本にとっては急務の課題である。

11-8

その地域のめぐみを最適化し、提供されるのが「郷土料理」であろう。丹波篠山の大手食堂でいただいた、猪肉(シシ)と、「山の芋」と呼ばれる自然薯のトロロがかかった「シシ肉とろろ丼」は絶品だった。いつか「ぼたん鍋」も挑戦したいものだ。

11-9

食べ物もそうだが、こうした過疎地域を育て、運営することの大変さもまたある。けれどNOTEの仕組みは卓越している。積極的に専門的な企業や組織、メンバーを入れながら、「地域に必要なものを最適化して届ける」ことに特化している。きちんと賑わいづくりも始まっていて、そこを目掛けてわざわざ遠方から集客、、、と思いきや、集まってくるのは地元の人たち。小さな顔が見えるコミュニティが自生し始めている。これが町のあるべき姿で、まさに最適化された効果が出ている。インバウンド、アウトバウンドではなく、まずは地元、近所、両隣、街中だ。

11-10

また街中のホテルは、サービスを充実させ、宿泊業や飲食業に長けたチームで構成されているので、他と遜色がない。だから、質を落とすことなく、最適な金額を満足して払うことができる。一方で集落は、そこに住む人たちが、その場所を運営している。街中とは違い、ホッとした空気感と距離感が、都会暮らしや海外生活が長い人たちや外国人にとっては、安らぎを与えている。

地域にはいま「最適化」が必要なのかもしれない。そして、そこに必要とされる人もまた必ずいる。地域へ飛び込むチャンスは、居場所探しではなく、明確な意志であることを確認する。まだまだ意志がある人がいる限り、地域は衰退することはない。

松田龍太郎

松田龍太郎

2010年より株式会社oiseau(オアゾ)を設立。主に食にまつわる事業開発・店舗開発では、これまで50店舗以上を手掛け、一方企画・プロデュースの分野では、元テレビ局カメラマンとして、食に限らずメディア、PRコンテンツの発信、企画展開を得意としている。2020年4月より「奈良蔦屋書店」2階に「ブラッスリーアンド カフェ ウグイス」として新たなポップアップレストランを、そして同じく同月、青森県弘前市に開館予定「弘前れんが倉庫美術館」に付帯するカフェ「CAFE & RESTAURANT BRICK」を、それぞれ立ち上げ、運営・事業を作り上げている。
http://www.oiseau.co.jp